なりきれない女の雑記

なりきれない女の雑記

現実と虚構に溺れる毎日。

『獣になれない私たち』自分の人生を取り戻す晶と恒星たち

けもなれ最終回。野木亜希子さんらしい、とても軽やかで心にすーっと風が通るような終わり方だった。視聴率は振るわなかったようだけど、世間がどう言おうと、そんなことどうでもいい。生きづらさを抱えた人だけではなく、すべての人に対して何かしらの気づきや考えをもたらす意義深いドラマだったと私は思う。

※以下、完全ネタバレで死ぬほど長いのでご注意ください。

一夜が明けて

晶は恒星と寝たことを後悔していた。こっそり営業していた5tapに寄ると、タクラマカン斉藤がおすすめしてきたのは「大航海時代のビール」だった。そして恒星も、晶とは行き違いで5tapに立ち寄り、同じビールを飲む。お互いにあの夜の出来事を大後悔していた。

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同じ頃、京谷は母・千春の買い物に付き合った帰りだった。5年ぶりの東京を楽しんだ千春は、京谷にマンションを売ったらどうかと言う。そうでないと朱里が次の恋ができないと言う千春に、京谷は一瞬理解できない顔をする。その態度を見て、千春が京谷を一喝するシーンは、全国の女子が喝采を送ったことだろう笑。少なくとも私はスカッとした。残念な男だなぁ、京谷。未だに晶の事を諦められない様子だけども、どうなるのか。

晶は九十九との一件もあり、会社を休んだ。晶のいない社内では、夢子が「どうして社長と闘ってくれなかったのか」と上野や佐久間に詰め寄る。でも一方で同じくその場にいた夢子がなぜ黙っていたのか問われると、「自分が平和ならそれでいい、というのがまさに私だった。」と苦笑いするのだった。そうやって3人が話していると九十九が出社し、「早く謝れば許してやるのに」とまた怒鳴っている。結局、九十九は根本がわかってないのだ。

進まない晶と恒星の話し合い、そして板挟みのタクラマカン

その夜、晶と恒星は5tapの前で鉢合わせする。二人はいつものカウンターではなく、テーブル席で向かい合い、あの夜の事を話す。あれはお互い弱っていたから事故だった、と寝たことをなかったことにしようとする恒星に、晶は「恒星はそういう人だった」とあきれたように返す。その場の雰囲気でもたれかかるように甘えあう関係を「最低の関係」と称し、一番なりたくなかったと言う晶。その顔は明らかに拗ねている。後ろで聞かないように作業しているのか、タクラマカンがそわそわしている感じが非常にいたたまれなくて、滑稽だ。笑

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夢子と上野

そんなやり取りの中、晶に電話がかかってくる。恒星が止めるのも意に介さず、晶はかかってきた電話に出て、その電話の相手だった夢子と上野を5tapに呼び込んでしまう。そして恒星との話を中断して、晶は夢子と上野と話し始める。晶が九十九と対峙したときに「何も言えなくてごめん。」と謝る夢子と上野。社内では退職が相次いでいた。二人とも晶にやめてほしくないと伝えるが、会社を支える“守護神"として晶にやめてほしくないという上野に対して、夢子の言い方は夢子らしくてとても良かった。

夢子「深海さん辞めればいい。戻ったって社長が調子に乗るだけで何にも変わらない。深海さんが幸せな方がいい。・・・って言いたいけど本当の本音を言うと、深海さん戻ってきてほしい~~~!」

「なんだ、今感動したのに。」

夢子「戻ってほしいって気持ちと、辞めても仕方ないって気持ちが心の中でのこったのこったしてるの。」

夢子と上野が帰り、また話を再開する晶と恒星。あの夜の事を想定外だったとするも、合意だったと認めあう二人。でも合意してしまったこと自体を後悔しているという晶に、だったらしなきゃよかったじゃんと少しムッとする恒星。でも恒星自身も事後にかなり後悔していたことを晶に指摘され、お互いに拗ね合い、後悔し合い、もはや何の話し合いなのかよくわからない笑。

京谷とサブロー、そして朱里

すると、5tapに京谷がやってくる。マンションにいない朱里を探して、晶を頼って来たのだった。そして、どこから湧いて出たのかわからないがサブローもひょっこり現れる。晶と京谷が警察に捜索願を出しに行こうと店を一旦出た間に、サブローは満面の笑みで恒星にある写真を見せる。可愛い彼女だと話す写真には朱里のウサギ・たっちんが写っていた。またしてもサブローがファインプレーをかましたのだ。サブローが恒星にあっさり事情を白状したおかげで、朱里がネットカフェに居たことがわかる。恒星が朱里に晶と京谷に連絡するよう促すと、「生きてます。二人そろってバカじゃない?」とメールする朱里。人に優しくされるとトゲトゲしてしまう朱里に、「じゃあ優しくすればいいじゃないですか」と当たり前のようにまっすぐ話すサブロー。そんなまっすぐでテンションの高いサブローにペースを崩される朱里だが、まんざらでもなさそうな感じだ。

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一方で、5tapを出て朱里の捜索願を出しに行こうとしていた晶と京谷は、朱里のメールを見て安心する。歩きながら、朱里が京谷に感謝していたと話す晶。自分も京谷に感謝しているし、京谷には幸せになってほしいと言いかけると京谷が「勝手に決めんなよ!」とテレ朝あたりで聞き覚えのあるセリフを口にして、晶の前に出る。そして、改めて自分とやり直してほしいと懇願する。

呉羽とカイジ

戻ってきた晶は再び恒星と話を始める。朱里が無事見つかったことを伝えると、恒星は何も知らなかったように「そっか」と言う。またも、恒星は本当のことを言わない。晶が「京谷がよろしくって言っていた」と伝えると「キモ」と返す恒星。

恒星「晶さんってああいう男が好みなんですね~」

「何?突然。」

恒星「いや、別に」

「恒星さんの好みは呉羽さんでしょ?お互いに全然違うね。」

恒星「俺、髭だしな。」

「キモい笑顔だし。」

恒星「今はキモくない。」

何これ。恒星の嫉妬とも思える言い方に、萌えてしまった。これもう好きだって言ってません?笑 そんな絶妙な雰囲気に差し掛かったところに、二人にまた電話がかかってくる。今度はこっちの方が大事な話だから出ない、という晶と恒星だが、鳴り止まぬコール音に耐えられずお互いに電話に出る。恒星宛の電話が橘カイジから、そして晶宛の電話は呉羽からだった。二人は橘夫妻に呼ばれ、呉羽が軟禁されているホテルを訪ねる。

呉羽の謝罪会見

今回の呉羽の炎上騒動と日本の体質に嫌気が差し、勢いでオーストラリアに移住すると言い出すカイジと呉羽。それはあっさり冗談だとしつつ、現実は謝罪会見をすることになったと言う。いかにも謝罪マナーに沿ったようなネイビーのワンピースを手に、ロボットのように謝罪文言を言う呉羽。本当にいいの?と心配する晶に呉羽はこう話す。

呉羽「私が手術した時、あの時カイジが言ってくれたんだよね。『くれちんはなにも失ってない』って。『芋虫が蝶になるとき、さなぎの中で劇的に変化する。それはちっちゃな芋虫自身の力で変化しただけ。くれちんは新しいくれちんなんだよ。』それを聞いてカイジにプロポーズしたの。『いいよ』って言われた時鐘が鳴ったよね~♪リーンドーン♪って。」

「ん?鐘の音って後から鳴ったの?恋に落ちたときじゃなくて?」

呉羽カイジの時はね。荘厳な音色だった。」 

そして呉羽の謝罪会見が始まる。不躾なマスコミからの質問が続き、子どもの予定について聞かれると、呉羽がとうとうキレる。「あのさ・・・結婚って子ども作るためにするの?一緒にいたいから結婚したの。それ以上なんかある?」マスコミはここぞとばかりに呉羽に反省していないのか?と責めると呉羽はこう返す。

呉羽「反省してます。ここにこんな恰好でのこのこ出てきたことに、反省しています。橘呉羽はカイジの妻である前に、呉羽です。これからも好きに生きようと思います。カイジと一緒に。」

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取材に来ていた記者たちは会見を終わらせ帰ろうとする呉羽に、何しに来たんだ!と投げかける。それに対する呉羽の答えが最高にカッコよかった。

呉羽「自分以外の何物にもなれないことを確かめに。」

ホテルの部屋で見守っていたカイジは嬉しそうに呉羽を迎えに部屋を飛び出す。残された晶と恒星は再び話の続きをし始める。恒星が言いかけた、仕事を失うかもしれないという話について聞く晶。呉羽やカイジみたいな潔さは自分たちには真似できないとしつつ、人に支配される人生はもうごめんだと言う恒星。そんな恒星の話を聞いて、何かを心に決めたような晶は、バカか?と聞く恒星に「いいんじゃない?バカで」と肯定する。

自分の人生を取り戻すために

晶と恒星はホテルを後にし、晶はその足で朱里がいるネットカフェに向かう。呉羽の謝罪会見を見ていた朱里は晶の訪問に驚く。晶は朱里が置いていったウサギのキャラクターの置物を手に、朱里に合う場所が必ずあると声をかける。そして、自分も探すと加える。朱里は晶の温かな言葉に涙を流さずにはいられなかった。

翌日、晶は出社すると九十九に改めて話を聞いてほしいと声をかける。そして、朱里の退職願を渡す。そして、九十九に私たち社員をどう思っているのか問う。

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「社長が言うように、社員は替えが効きます。だけど私たちにとっても、上司も替えが効くんです。社長の怒鳴り声はまるで恫喝です。」

九十九「俺かてな、仕事がきちんとできとったら怒鳴ったりせんわい。」

「普通に話してほしいんです。矢継ぎ早の命令も追いつけません。」

九十九「普通のスピードやろ!どんだけちんたら話したらええっちゅうねん。」

「みんなが社長と同じじゃないんです!」

九十九「お前らがボンクラなんじゃ!」

晶「社長以外全員ボンクラなら社長の言葉は社員の誰にも通じて無いことになります。悲しいと思いませんか?私は悲しいです。社長と言葉が通じなくて。一方通行の関係はしんどいです。私は社長の下で働く人間です。“人間”・・・“人間”だから苦しかったり、悲しかったり、間違えたりもします。もう限界って思ったりもします。今までお世話になりました。自分を殺して本当に死んでしまう前に、辞めます。ちゃんと引き継ぎはします。失礼します。」

九十九「ちょっと待て深海!こんなん認めへんぞ!何が不満やねん!」

佐久間「何が不満かたくさん言ってきたよ!!!俺も深海さんも。少しくらい聞いてくれたっていいじゃない!」

佐久間の加勢を皮切りに、夢子や他の人も次々と九十九に不満や聞いてほしいことを口に出す。そして、上野は神格化した晶への依存から卒業し「次の職場でも頑張ってください!」と送り出す。そんな姿に夢子は「よくやった!」と拍手する。

その頃恒星は、事務所で先輩に不正に加担していたことを告白していた。税務署に自らの不正加担を告白し、関連会社の脱税調査を促そうとしている恒星に、自分の人生をかける必要はないと止める。そんな先輩の言葉に恒星は「自分の人生を取り戻そうと思っている」と返す。そして、税務署に向かい、すべてをあきらかにした。そのままその足で、不正の依頼主の会社に乗り込み、お金と書類を突き返し不正を暴露したと告げる。「もう手は貸さない」とはっきりと断り、併せて一発お見舞いする。してやったり!という顔でその場を逃げる恒星の目はとても輝いていた。そして、ひっそりと事務所を畳み、町を出てしまった。

幸せは私たち次第

5tapが2周年パーティを控え、恒星の行方を心配している晶。恒星が大好きなサブローも、同じく心配していた。そんなサブローが働くラーメン屋で朱里は住み込みで働き始めた。何だかサブローと良い感じだ。夕方過ぎ、晶の家には京谷が訪ね、先日の返事を聞く。「ごめんなさい」と断る晶に一瞬ショックを受けるも、やっぱりなと納得する。「俺も幸せ探すかー」と言う、その顔はとても朗らかだった。

京谷が帰り、晶は一人冷蔵庫からビールを取り出し飲んでいると、電話がかかってくる。それは恒星だった。「生きてたんだ?」という晶のいじらしい聞き方に、「死なねえよ」と返す恒星。たわいもない話をする中で、「ビール飲もうよ。一緒に飲みたいよ」と翌日に迫った5tapの周年パーティに誘う晶。その声はもうかつての晶じゃなかった。

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そして迎えた周年パーティの日。賑わう5tapの店内にはサブローと朱里、そして夢子・上野・佐久間に連れられて九十九も訪れる。しかし、そこには晶と恒星の姿はない。二人は違う場所で再会していた。そこは1年前二人が飲めなかった那須のヴィンテージビール「NINE TAILED CATS」という希少なビールを製造するブルワリーだった。不正の暴露によって全てを失った恒星が命があっても人生終わりと自虐的に言うと、晶は「終わってないよ。変わっただけ」と言い換える。かつてカイジが呉羽を救った言葉だった。ビールの熟成に例え、苦味がいつか無くなると前向きに話す晶に、恒星は笑いながらビールを注ぐ。二人が乾杯する頃、5tapでも皆が乾杯し、呉羽とカイジシドニーで乾杯し、京谷は合コンで乾杯をし、皆ビールグラスを片手に、あらゆるしがらみから解放された笑顔でその瞬間を楽しんでいた。

晶と恒星は最後の一杯を飲み終えると、近くにある教会に足を運ぶ。16時に鳴るという鐘の音を待ちながら、晶は切り出す。

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晶「鐘の音が鳴っても鳴らなくても、一緒にいることはできるかな?」

恒星「それはわからないけど、俺たち次第じゃない?」

二人は教会の鐘を見上げながら、晶は手を伸ばし、恒星の手を握る。それを恒星は握り返すのだった。

 

やっと、感想。

友人があらすじ読んでくれてるって言ってくれたので、思わず長くなってしまった。

第9話の「間違えた!」は、文字通りの間違えた!だった。(でも私的には、そういう夜だってあるんだと思うのですよ。晶やはり真面目。)二人はお互いを人として認め合えて壊したくなかった仲だったからこそ、一線を超えたことを後悔していたんだと思う。それをゆっくり話したいのに、邪魔の入ること入ること・・・。まるでアメリカのお茶の間でよく見るsitcom(シットコムシチュエーション・コメディ)のようだった。1日ってこんなに長かったっけ?と言うくらい、色々なことが起こる笑。間延び感なく観られたのは、野木さんの脚本のテンポの良さだからこそだと思う。

また、それぞれのセリフがとてもよかった。特に呉羽のかっこよさには惚れ惚れ。言う事一つ一つが「ほんとそれ」。そして、カイジの包容力・・・見習え京谷!笑、呉羽じゃなくても鐘が鳴るわ。一度失敗しても、晶や恒星が再度立ち上がり爆弾を投げられたのはこの二人のおかげだし。この呉羽というキャラが、闇に迷う晶たちを導く光となっていたと思う。とにかく、セリフがものすごく丁寧に作り込まれていたドラマだった。

晶を演じてる新垣結衣も目線とか声のトーンとかが「感情的に近づきすぎると傷だらけになると警戒して、ある程度距離を保ってる感覚」が絶妙で、ものすごく考えて演じられてると思った。結構晶や朱里にはイラついたんだけど、数年前の私を見ているようでとても愛おしいキャラクターだった。恒星は言葉数は少ないけど、間の取り方がさすがだなと。松田龍平は佇んでるだけで絵になる。田中圭は言わずもがな。でも今まさに引っ張りだこの彼が、あえて女性の反感を買うようなキャラを演じるとは。いるいるこういう男、という感じにぴったりとハマっていた。

わかりやすい感動を望む人にとっては、アンナチュラルの中堂さんの言葉を借りると、クソつまらないドラマだったと思う。晶は京谷と別れるのも、仕事を辞めるのにものすごく時間がかかったし、朱里は結局仕事から逃げてしまったし、呉羽はやっぱりぶっ飛んでるし、恒星も晶のことどこまで考えてるかわからないし、京谷も結局は合コンで家庭的な女性を見つけあっさりと家庭を築くだろうし、九十九も結局は変わらずまた新たな社員に怒鳴るのだろう。ドラマとして晴れやかなラストを望んでいる人とっては、腑に落ちなかったのかもしれない。

でも、今私たちが生きている現実にそんなわかりやすい正解とか、結末とか転がってるだろうか。そんなことは滅多にない。一生懸命生きていると、色々複雑で曖昧なことばかりだ。だからこのドラマは、白か黒かと正解を求めがちな社会に対して、あえて曖昧さを描く点がとてもチャレンジングで良かったと思う。少なくとも私は「そう思って良いんだ」と、様々なシーンに共感してクソ救われた。

私たちは知らず知らずに人から求められた役割の上で生きていると思う。心からそれを望んでて幸せに感じているなら何も問題はない。しかし、それが強いられたもので、自分を殺さなければいけないほどでは問題だ。この作品は、その表面では見えない支配を映像化して見せてくれた。いつのまにか誰かに支配された人生を自分で一度壊して取り戻す再生の物語として、華やかでわかりやすくはないけれど、めんどくさいこの社会で一生懸命生きている私たちに一筋の光を見せてくれたように思う。人生のチャンスは一度きりじゃない。失敗したって、大切なものを失ったって、何度でも取り戻せる。「今何してんの?」「一緒に飲もうよ」って言える人ができる、ってことが単純なことが幸せだったりする。人は、意外と思ったより一人じゃない。そんな希望を見せてくれたドラマだった。

今日もどこかで誰かと、一人でも、乾杯!

 

追記。

ブログタイトル、やっぱ前のに戻そうかな・・・

ま、いいか。自分以外の何者にも「なりきれない」女ですもの。笑笑

『獣になれない私たち』晶と恒星が投げた爆弾の行方は

逃げ恥の第9話で大どんでん返しをした野木さんはやはり甘くなかった。そう、現実は甘くないんだよ。最終回目前でこう持ってくるかと驚かされた第9話。※ここからめちゃくちゃ長く、完全ネタバレとなりますのでご注意ください。

穏やかな朝

ゲームを夜通ししていた晶と恒星は事務所で朝を迎える。ぼんやりとした朝日の中、二人はコーヒーを飲みに出かける。店に向かう途中の不動産屋の前で、晶は立ち止まる。「ご希望は?」と恒星は店員のように尋ねる。間取り、築年数、部屋の階数・・・次々と希望を言う晶に恒星は苦笑する。絶対譲れないものは「住み心地」という晶に、住まないとわからないでしょ、と恒星は突っ込む。もうすぐ部屋の更新だという晶と、不正書類の処理期日が迫っている恒星。どうにもならないのか尋ねる晶に「一度始めた悪事は続けなきゃならない」と答える恒星。それを晶は肯定し、カフェのカウンターバーで二人は朝ごはんを食べ、穏やかな時間を過ごす。

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冒頭の数分の間に、ものすごい穏やかなシーンが。これ普通だったら恋愛ドラマのワンシーンじゃないですか。お店出た後、手をつないでてもおかしくない空気感。晶に「もう電車のホーム怖くない?」と聞く恒星が優しすぎて・・・。でも、あまりにも穏やかで幸せすぎて、ここからズドンと悲しいことが起こるんじゃないかと身構えてしまった私。晶も恒星にすっかり心を開いていて、ずっとこの陽だまりに包まれていたいほど優しいシーンなのに、胸がざわつくのはなぜ・・・。

 

不穏な空気

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晶の会社・ツクモクリエイトジャパンでは、夢子と上野が新規契約を取り、朱里もすっかりSEチームに馴染み、雰囲気が良くなってきていた。そんな中、社長の九十九は晶を「特別チーフクリエイター部長」に再昇格させ、朱里を「社長秘書」に任命する。突然の辞令に理解できない晶に、SEの佐久間は「俺のせいかも」とつぶやく。晶の働きで営業利益を上げ、佐久間や他のSEを昇給することで退職を防ぐためではないかと話す。過度な期待に加え、さらに朱里の面倒まで見なければならない晶は、不安を隠せない様子だった。

一方で恒星は、呉羽のスキャンダルに巻き込まれる。結婚前の奔放な呉羽の男性関係が週刊誌に載ってしまい、恒星とのツーショットもその一つとして載ってしまったのだ。5tapの前には記者が集まり、マスターのタクラマカン斉藤は頭を抱えてしまう。呉羽自身は大したことと思ってる様子はなく、記者の前で挑発的な対応をして火に油を注いでしまう。後にその影響でカイジは対応に追われることとなり、呉羽はこれ以上騒動を大きくしないよう一時的にホテルに泊まるよう、カイジの部下に釘を刺されてしまう。

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視聴者の心に波風立たせるのが野木亜希子さんは上手いんだよね。晶の再昇進や朱里の秘書登用は不穏の始まり。でもその前に社長の九十九がシグナルを出していた。九十九は晶や他の社員が順調に仕事をこなしていくのを見て、「自分よりあいつの方が認められてるんちゃうんか」そんな不安で九十九の心はいっぱいだったのかもしれない。佐久間に前回ズバッと経営者に向いてないと斬られたことで、彼なりの自尊心が崩れてしまってるのかと思う。とにかく、晶への警戒心むき出しの視線が怖かった。呉羽のスキャンダルの結末はこの時点では少しまだわからないけど、自由だった呉羽から自由が奪われ、平和なオアシスだった5tapに嵐を呼びそうでなんだか怖い。そして別件だけど、とにかく呉羽のファッションがすべてにおいてツボすぎる。人様に迷惑かけちゃうほど可愛いからスキャンダルも仕方ない。(そう思わせる呉羽が罪深い。笑)

 

女3人と男2人

その週の日曜。朱里がのんびりネットニュースを貪っていると、京谷の母・千春が急に訪ねてくる。もちろん千春は朱里がいることを知らない。鉢合わせした二人はパニックとなり、千春が慌てて京谷に電話している間に朱里は荷物をまとめ、うさぎのたっちんを連れ、隙を見て晶の家に逃げ込む。そんな事情を知らない晶はすでに千春から家に来ると連絡を受けて了承していた。そして晶の家で三人は鉢合わせしてしまう。5tapに移動し、今までについて説明する晶。その異様な光景をたまたま飲みに来た恒星とタクラマカンは心配そうに見ている。事の成り行きを知った千春は「育て方を間違えた」と京谷について晶に詫びる。そして、改めて挨拶する朱里に対しての過去の振る舞いについても謝る千春に、朱里は京谷がいたから今生きていると感謝する。そんな二人の姿を見て、晶は思わず泣いてしまい、つられて朱里も千春も泣き始めてしまう。

遅れて京谷が到着する頃には、3人はすっかり打ち解け女同士で盛り上がっていた。訳がわからない京谷は恒星の隣に座らされ、「女の人って何考えてるんだろう。」と首をかしげる。隣に座っている人が恒星だと改めて警戒し、晶との関係について問う京谷。晶とはただの飲み友達で、過去に晶と寝たというのは嘘だと告白しつつ、晶のことを「性別関係なく人間として認め合える貴重な存在。失うのは惜しい」と大事そうに言う恒星。そんな恒星の様子に、京谷はますます焦るのだった。

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ここでやっと千春にも元凶は「京谷」だったということが初めて理解される。でも、普通じゃありえないけど、元カノ2人と元凶の母親が3人で盛り上がるというのは少し心が軽くなった。ここでうちの京谷は本当に良い子なのよ!だから晶ちゃん!!ってならなくてほんとよかった。田中美佐子のちゃっかりしたおばちゃん演技が本当に上手くて、嫌味がなくてとてもよかったな。(とりあえず私は義母がいきなり押しかけてきたら断りますけど笑)そして、京谷、そういうとこだよ。“女の人”って性別で人間性を一括りにくくっちゃうとこだよ!!そこが恒星と違う。いや、恒星もそうだったかもしれない。人間として認めあえる晶と出会ったことで変わったのかもしれない。

そして、晶が変えたのは恒星だけではなかった。朱里だ。一緒にパジャマトークをするほど心を許しあえるとは。さすが同じ敵を持つと強い笑。今は多くの人と関わりを持つことで一人を意識せず生きていけると言う晶に対し、最終的には誰かに愛されたいと言う朱里。あんなに嫌な女に見えた朱里が、仕事をし始めたことで自信を取り戻し、人から愛されたいと願う姿に感情移入し始めた人も多いのではないだろうか。少なくとも私は朱里の「愛されたいなぁ」という言葉に胸がきゅっとなり、応援したくなったのだ。しかし・・・その儚い願いに残酷な現実が突き刺さる展開に。野木さん容赦ない。

 

所詮他人

月曜日、寝坊した晶と朱里が遅刻寸前で到着すると、待ち構えていたのは怒り心頭の九十九だった。朱里は日曜だからと九十九からのタスク連絡を無視していたからだった。血相を変えて慌ててとりかかる朱里を見て、晶は九十九にもう少し余裕を持たせるよう願い出ると「自分が指導しろ!」と追加の営業ノルマとともに跳ね返される。九十九の有無を言わさない態度に晶は胸に秘めた退職願を取り出そうとするが、頑張ろうとしている朱里を見て手が止まってしまう。そこから、晶のフォローが追い付かないほど、九十九は朱里に対して怒涛のようにタスクの指示を出していく。IDカード・名刺・手帳をもらったことで、少し嬉しそうにする朱里。何とか喰らいつこうと必死にそのタスクをこなしていく。しかし、それでも九十九は晶の方が出来が良いと朱里を叱りつける。

そんな中、朱里がミスを冒す。朱里がメールを作っている際に九十九が横やりで指示を入れたため、慌ててしまった朱里はメールアドレスを取り違え機密情報を他社に送ってしまったのだ。朱里は九十九のお使いから戻ると、自分のせいで大変なことになっていると知り、IDカードを置いてその場を去ってしまう。

一方で、恒星が企業監査のヘルプをしていると、そこの経理部長が以前告発してきた大熊を解雇したという報告をしてきた。口封じをされたのだと察すると「大熊の負け」と虚しそうに言う恒星。その後、帰り道で待っていた大熊に話しかけられる。退職金や老後の生活を考えると戦えなかったという大熊に、それが普通ですよと言葉をかける恒星。大熊は切り札としていつか使うつもりだった架空取引の記録を、泣きながら破り歩道橋から投げ捨てる。

その夜恒星が5tapに寄ろうとすると休業していた。そこに晶が通りかかる。朱里が手帳に「ごめんなさい」と残し、晶の家から失踪したのだ。何もできなかったと嘆く晶に、他人は所詮何もできないと、慰める恒星。朱里の書き置きを破り捨てるのだった。

 

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苦しい。やりきれない。朱里のミスは本当に些細で、焦りから誰でも起こりうること。自分のふがいないミスのせいで会社で大騒ぎになっているというのは、本当にいたたまれない(自分も過去に経験あるから辛い)。朱里は何とか社会に復帰しようと必死になっていた時だから、些細なつまづきでも大怪我になってしまう。また心が折れて自己否定のループに陥ってしまう。頑張れなかったとサブローの前で泣き崩れるシーンは思わずもらい泣きしてしまった。そして、大熊の涙も辛かった。築き上げてきた生活を守らなきゃいけない、何としても生きていかなきゃいけない。だから結局人は権力の前では戦えない。それが当然と諦めなきゃいけない現実をまざまざと見せつけられて、私たちは何を支えに生きていくのか。恒星の言うように、他人はどうにもできないし、所詮自分で立ち直るしかないんだけど、映像が現実とリンクしすぎて色々思い出して泣けてしまった。ただのドラマの世界じゃないよ、もう。登場人物は私が生きる世界の中にいる。

 

投げた爆弾の行方

事務所に戻った恒星は粉飾決算の書類を作り終えた。しかし、作った書類を破り捨てる。次の日、取りに来た依頼主に恒星は「もうできない。勘弁してくれ」と何度も頭を下げて断ろうとする。しかし、依頼主は不正に加担し会計士として今後不利になるのは恒星だと迫られ、結局断ることができなかった。

一方で、晶は出社しても朱里に連絡を取り続けていた。朱里のデスクには「落ち着いてガンバレ」「必要な人になる」など自分を鼓舞する付箋が貼ってあった。そんな中、九十九が朱里のことを笑いながら批判して周囲の部下に同意を求めていた。大声で怒鳴り散らし、朱里のミスを「やる気が足らないから」と言う九十九に対して、とうとう晶は我慢できなくなる。

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「はぁ?やる気?やる気があれば何でもできる?やる気ってそんなにすごいんですか?仕事ですから、働いてお給料もらわないと生きていけないから働きますよ。いらないやつだって思われたくないんでできることはします。社長に逆らうと怖いから!面倒だから!みんなめちゃくちゃだと思っているのに表向きには要求を聞いて…目の前で怒鳴られても誰も助けない!これが平和ですか?みんなにそうさせてるのは社長です!こんな会社でどうやって働けって言うんですか?!」

九十九「ほな辞めたらええ。さっさと辞め!今すぐ辞め!文句歯しか出えへん社員いらんのじゃ。ここは俺の会社や!深海一人おらんでも、どうとでもなる!前の営業部長辞めた時も同じや。どうとでもなる。みんなそれが分かってるから何も言わへんねん。なぁ!?」

九十九にそう言われた晶は、意気消沈して出過ぎた事を言ったと詫び、会社を後にした。そして、雨の降る中行き着いたのは恒星の事務所。恒星は不正書類の作成を断るために依頼主に土下座した後だった。その様子を見た晶は「どうにかしようとした?」と聞く。恒星は「うん、した。でもだめだった。晶さんは何かあった?」と返してくる。晶も初めて吠えたこと、それが跳ね返されたことを言う。

恒星「爆弾投げた?」

「投げようとして投げられた。私は必要なかった。」

そう言う晶の目元を恒星は優しく触れ、抱き寄せる。そのまま頬にキスし、二人は求め合うように抱き合ってキスをする。そのままベッドに入り、二人はとうとう一線を超えた。その翌朝、晶は先に支度をして恒星の事務所を出る。その様子を恒星は背中越しに感じながら、まだ寝ているふりをして何も声はかけなかった。晶は事務所を出るとこう言う。「間違った!?」

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うーあーーーー。九十九や周りの反応に見覚えがありすぎて、若干過呼吸になりそうだった。実は晶と同じことを私もしたことがある。私が以前勤めていたところでは、公然とミスを批判する上司がいた。私を含めた同僚に対して公開処刑のような叱責が続き、とうとう私も上司に食ってかかった。しかし結果は晶と同じだった。私も皆で助け合える環境を作るために吠えたが、一緒に吠えてくれる人はその場にいなかったのだ。その後結果的に私は辞めたが、この人たちに何言ってもしょうがない・・・と非常に落胆したことを覚えている。(ちなみに残業代未払いや有給をもらえないということもあったので、私はこっそり労基に通報して辞めたけど。晶にその勢いはあるのか・・・)

もちろん、ミスは無い方がいいし、仕事はできるに越したことはない。でも問題は環境だ。誰も批判されている人も守らない、誰も声を上げられない環境は人を変えてしまう。人は命令され、威圧されるのが常態化した環境にいると他者に対して残酷になる。そういう環境の中では、皆自分を守るために「上司の命令に従っているだけ」と思うことで自分の行動を正当化してしまう。晶が言っていることは正しいと皆思っているけど、それに同調することはしない。むしろ「そんなこと言うなんて馬鹿」と思っているかもしれない。もうその時点でおかしいのに、おかしいと言えない人間性を作ってしまうのが怖いのだ。晶は少なからず自分は必要とされているということでここで働く意義を見出していた。その意義を叩き潰されたのだから、ショックは計り知れない。悔しいけど、フランス革命のように皆が立ち上がり社長をぶっつぶす!という展開は本当に虚構の世界なんだなと見せしめられ、胸が苦しくなった。

恒星も同じくして、権力という鎖を断ち切ろうとしたけど、結局はみぞおちにパンチくらって、足枷を外すことはできなかった。そんな傷ついた二人が甘えあう様は美しかったけど、儚くて切なすぎた。恒星の手は優しい。朱里の書置きを晶がもう見ないようにびりびりと破く手も、晶の涙を拭おうとする手も、その顔を包み込む手も。でも恒星自身も晶を慰めることで、自分の心を整理してたんじゃないかな。愛があったとしても、このシーンは盛り上がるほど嬉しくはならなかった。むしろ苦しかった。これじゃ何の解決にもならないから。だからラストの晶の我に返った「間違えた!」は「恒星との刹那的な営み」に、ではなく「これで解決じゃなかった!」であってほしい。

最終回前にこんなどんでん返しを持ってきた野木さんの脚本には、本当に恐れ入る。みんな戦った!自由を勝ち取った!ウォー!となれば確かにHAPPYなのかもしれない。でも現実はそんなんじゃない。ただのドラマで終わらせないぞ、という野木さんの意気込みを感じるのだ。もはや晶と恒星のラブなんてどうでもいい笑。今夜の最終回ではどうまとめるのか数パターン考えてしまうけど、願わくば、辛すぎて逃げたくなるほど苦しい中にも少しの光を見せてほしい。人を救うのは人しかいないから。人とのつながりの中で生まれる希望を最終回で見られることを期待している。

 

自分でもびっくりするくらい長くなってしまったけど最後に。

ガッキー♡とは気安く呼びたくなくなるほど、このドラマは新垣さんの新境地だと思う。ほんと批判の多いドラマだけど、私はとてもチャレンジングで良いと思う。そして、松田龍平の色気ぇぇぇ!!!浴びたい。こういう切ないシーンに雨降らせる演出が憎たらしいほどベタだったけど、映像が綺麗すぎた。眼福。

以上。笑

 

宇多田ヒカルライブ「Hikaru Utada Laughter in the Dark 2018」感想

12月5日、待ちに待った宇多田ヒカル(以下宇多田さん)のライブに行ってきた。椎名林檎(以下林檎さん)に続き、なんて私は幸運なんだろう!興奮冷めやらぬうちにライブ感想書き留める。私の2018年はこれで終わった。もう悔いない。

※ネタバレ含みますのでご注意ください。

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入場するまで

会場は私にとってはおなじみの、さいたまスーパーアリーナ。2017年の星野源さんも先日の林檎さんも全部ここ。グッズもあらかじめネットで買っているし、後述する入場のスムーズさを振り返ると、正直もうちょい遅く行っても余裕だったなと思うが、開場1時間前の17時に到着。グッズ売り場を見てみると、事前購入の方が多いからか、17時時点でガラガラ。もともとTシャツとタオルは買っていたけど、実物を見てビーニー(ニット帽)が可愛かったので、その場でお買い上げ。早速被って気分をさらに盛り上げる。

一人参戦のデメリットは待ち時間が暇な事だ。携帯の充電はフルの方がいい。今回仕事を早退しての参戦だったが、携帯の充電するのを忘れていて、暇つぶしに携帯いじるのを控えなければいけなかった。なのでスタバに入ってコーヒーを買い、ベンチに座って宇多田さんの名曲をシャッフルで聴きながらひたすら人間観察をしていた。けやきひろばを行き交うのは30代以上のカップルが多く、ライブグッズのグレーのフーディーを着てる率が高かった。あまり奇抜な方はおらず、皆シンプルにお洒落な方が多かった印象。そういや林檎さんの時と比べて、全体的にトイレとかスタバが空いてたな。そうこうしていると入場の時間に。コーヒーを飲み干し、そそくさと会場に向かう。入場は本当にスムーズ。事前に登録しているマイページから電子チケットを表示させ、画面のQRコードを係員に読み取ってもらい顔認証も同時に受ける。一瞬だった、ほんと一瞬。

 

厳かな始まりから唯一無二の空間へ

今回も林檎さんの時と同じく席は400レベルだった。しかし、前回はほぼ正面でもかなり遠いところだったが、今回はステージの横だったので結構近かった。ステージ脇は見にくいが、宇多田さんは肉眼で見える。映像パネルも見やすい。なんだ、400レベルも悪くない。近くを見渡すと、結構年配の方も多かった。ご夫婦率高っ!羨ましいなぁ。うちの夫は宇多田さん聴かないからなぁ。そう思ってると両隣がまたカップルで埋まっていき、会場はあっという間に満席。熱気がすごかった。しかし、開演5分前あたりから会場のざわめきが静まり、厳かな雰囲気で宇多田さんの登場を待ちわびる。こんな光景今まで初めてかも。

そして会場が暗くなり、奈落から宇多田さんが。いきなり『あなた』が始まる。うわぁぁあ!って歓声あげる暇なんてない。ぞわわっと鳥肌が立つ。本当に“宇多田ヒカル”って存在するんだ・・・と目の前で彼女が歌っているという事実を脳がすぐ処理できなくて、一瞬フリーズした。会場にいた皆さんの時が止まっていた気がする。脳に彼女の歌声が浸みこみ、やっと現実だと認識したとき、気が付いたら涙がこぼれていた。序盤の音が若干現実味がない聞こえ方だったような気がする。でも12/4星野源ANNでも言ってたけど、私の座席がステージ横だったから聞こえ方に差があったのかもしれない。会場の温度や湿度で音は変わっていく生き物。数分したらどうでもよくなった。彼女の歌声がまるで清らかな水流のように会場を巡り、目の前に“宇多田ヒカルがいる”という奇跡の瞬間にいる幸せで満たしていく。

その後、『道』『traveling』『COLORS』というリズミカルな曲が続き、みんな思い思いに音に身を委ねていく。宇多田さんも「みんなももっと一緒に歌ってよー!」と煽る。私も全てを忘れてノリノリでリズムに乗る。少しMCが入ってシーンが変わってからのPrisoner Of Love。聞きたかったからもうゾクゾクするほど嬉しくて、声にならない声が出てしまう。続いての『Kiss&Cry』では、ラストが『Can you Keep A Secret』とリミックスされてて超絶かっこよかった。自分の語彙力の足らなさが悔しくなるほど、最高で贅沢な空間だった。

 

ゆるゆる、そしてウルウルさせるMC

MCでは、彼女らしさが際立った。「あ、お水飲もうとしたら明るくなっちゃった。」とゆるーく始まり、挨拶。そして1日目のMCで言ったことの訂正から始まる。「さいたまスーパーアリーナでライブをしたのが17歳の時の2000年で18年ぶりかもと言ったら、その2000年は千葉マリンスタジアムで、さいたまスーパーアリーナは2006年でやったという・・全部間違ってたよ。あはは。」と会場が笑いに包まれ、和む。MC慣れしていなくてシャイな感じがとても可愛らしくて、もっともっと大好きになってしまった。特に、今回の20周年記念のツアーに際してのMCがとても印象的だった。

活動休止と発表したときにもうライブ見れないのかと思った人もいるだろうし、私もその時はライブやるだろうなと思ってたけど、そのあと色々あって人前や明るいライトの前に出るのが無理になった時があった。そんな中ライブができるのか心配になったけど、やりだしたら今までで一番ライブを楽しんでる状態にいるんだ。みんなひっくるめて20年ありがとう。ここでライブできてることが嬉しい。ほんとうにありがとうございます。

(記憶をたどった内容なのであしからず笑)

そう言ってくれたのだ。泣くだろ。泣くよね。私こそあなたのおかげで生きてこれました本当にありがとうだよーーと流れる涙をタオルで押さえてたら、「うん。じゃ、次いきます」って1秒で切り替わって、さっきまでのふにゃんとした話し声から一転、最高の歌声を聞かせてくれるんですよ。こっちはハッ!!ってなるんですよ。ほんと化け物ですよ。(褒めてる)

 

シンプルな演出だからこそ際立つ彼女の凄さ

ライブ自体はとにかくシンプル。衣装は前半は黒のロングドレス・後半は黒白のアシンメトリードレス・最後のアンコールはライブTシャツ(黒)に黒いパンツという3つのみ。シンプルなドレスから見える少し筋肉質な背中と腕がセクシーだった。この腕にお子さん抱えてるんだな、となんかグッときちゃったよ。照明も曲に合わせたカラーで彩る程度で、特殊なレーザーとかはない。映像も歌っている宇多田さんの切ない表情を映してくれる。『ともだち』『Too Proud』『誓い』では近未来的な音楽と照明と宇多田さんの歌声がもう見事に混ざり合って、最高のクラブシーンのようになっていた。もちろん全体において素晴らしくて、ここは日本か?埼玉じゃなくて実はニューヨークなんじゃないのか?と錯覚に陥るほど、もう最っっっ高にかっこよかった!!!!

林檎さんの時は会場全体がテーマパークのようで全体に目と耳が向いていたが、今回はもう耳も目もすべてが宇多田さんに一点集中。正反対。もちろんどっちがいいとか甲乙をつけるつもりはまったくない。どちらもとても良い。大好き。

前半・後半を分けるところでは、又吉直樹さんとの「絶望の中の笑い」をテーマにした対談コントが流れ、会場が笑いに包まれる。脚本も又吉さん。「SONGSスペシャル」でも対談の相手に又吉さんを指名したほどだから、よほど宇多田さんと又吉さんには通じるものがあるんだろうなぁ。たしかに文学的な価値観とか結構似ていそう。シュールで面白い演出だったなぁ。ぜひ円盤に収録してほしい。セリフ棒読みの宇多田さんが暴挙に出るところが本当に最高だから。スパーン!!

 

彼女と私の20年間に想いが爆発する2時間半

林檎さんの時もこれでもかと泣いたんだけど、私にとっての本丸・宇多田ヒカルはやはり想像以上に泣いた。彼女が活動してきた20年は私にとっても激動の20年で、彼女の曲一つ一つに思い入れがある。イントロが流れるともう走馬灯のように当時の想いがよみがえり、涙腺ダムに水分が溜まっていく。歌詞と気持ちがリンクしていき、曲がクライマックスに差し掛かったところでついに涙腺ダム崩壊。目からも鼻からも放水。両隣カップルに挟まれた単独アラサー女が一人ズビズビ言ってて少々恥ずかしかったぜ。それを数回。いやほとんどか。笑

前半部分の過去曲SAKURAドロップス『光』では、昔の淡い初恋を思い出すなど、過去を思い出し甘酸っぱい気分でホロリと涙したが、後半では今ここで彼女の歌を聴いているという現実や、20年間応援してきた自分の20年に想いを馳せて、セルフ感動して泣いてしまった笑。特にセンターステージでの真夏の通り雨』『花束を君には本当に泣きすぎた。宇多田さんが亡き母を想って書かれた歌、辛い気持ち乗り越えて今こうして私たちの前で歌ってくれてるんだなと思って泣けたし、私もこの20年間色々乗り越えたなぁと思って、こんな最高のご褒美に恵まれて今まで生きててよかったなぁと思ってむせび泣いてしまった。しかもその後畳み掛けるように『Forevermore』、そして『First love』『初恋』と続くからもう目が…水分出すぎてカラカラに。

 

アンコール、そして最高のフィナーレ

これが最後の曲・・・と『Play A Love Song』で軽やかにしめくくる。この曲も大好きなんだよなぁ。長い冬が終わる瞬間〜♪からの開放感がたまらない。照明もレインボーカラーで楽園感があってとてもよかった。夢のように曲が終わってしまい、一旦放心。いや、これで終わって欲しくない!!と思って手拍子して待っていたら、しばらくして「呼んでくれてありがとー!」とゆるーく戻ってきてくれた宇多田さん。和む。

歌わないかなーと思っていた『俺の彼女』がここで。低音がお腹に響いて身震いするほどかっこいい。ちょうど目の前に友達同士に思われる男性二人組がいて、男の人からしたらどんな風に聞こえる曲のかなーって少し気になったりして。そしてそこからの『Automatic』!!!アンコールでまたテンションぶち上がる。ちょっとファンクな感じのアレンジでもうグルーヴ感が最高だった。デビュー時の若々しさも大好きだけど、35歳の彼女が歌う『Automatic』も味わい深くて、また泣いてしまった。泣きながら自動的に揺れる私。もう誰にも止められない笑。

そして名残惜しくも本当にラストへ・・・。『Goodbye Happiness』という選曲が見事の一言。この幸せからサヨナラしなきゃいけない現実を突きつけられる笑。あの頃には戻れないけれど、私はもう一人じゃない。私は宇多田ヒカルというこの時代の奇跡を目の当たりにしたのだから・・・。そんな多幸感を最後に残して、女神は控えめに投げキスをして去っていった。

 

最後に

はあ・・だいぶ長くなっちまったぜ。読みにくくてすみません。もうね、長くもなるんですよ。ずっと会いたかったんだから。でも、本当にこの夢の時間が終わって思ったことはこれだった。

宇多田ヒカルがいるこの時代に生まれてよかった。

そして、これからも彼女の歌と共に生きよう。

 

 

以上!!

ありがとうございました!!

『獣になれない私たち』恒星が背負ってきた荷物を下ろす時

“自分がそうしたかったから自分で決めた”というセリフが印象的だった、けもなれ第8話。自分で決めた結果が不条理なものだったとして、それを受け入れることはできるだろうか。私はその先に夢を見ることはできるだろうか。恒星の過去に踏み込み、晶と恒星の距離もさらに近くなった回。そしてやっとあの登場人物の正体が明かされた。正直、かなり予想外のキャスティングだったので、内容一回吹っ飛んだ人も多いのでは笑。※以下ネタバレ含みますのでご注意ください。

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5tapで橘カイジの記事を見せるタクラマカン。恒星は呉羽の夫・橘カイジの会社の上場を手伝うことを決めたものの、カイジにドタキャンを繰り返されていることを明かす。「呉羽が乗り気なだけで、本当はカイジは恒星を意識していて会いたくないのではないか?」と仮説を立てる晶。京谷と別れ、懐には「退職願」という爆弾を隠していることを笑いながら明かす晶は、まるで憑き物が取れたようにスッキリしている。恒星と話す姿に前とは異なる心の余裕が少し伺える。そんな中、恒星に一本の連絡が入る。福島の実家の取り壊しが決まったということだった。高校まで恒星が育ったその土地は震災時の原発事故の影響で立ち入り禁止となり、空き家となった数年で荒れ果てていた。その話をする兄も今は行方不明になっていた。

 

晶と朱里

晶は懐に忍ばせた爆弾の効果もあってか、九十九に対しても果敢に業務改善を打診する。九十九は信頼するベテランSE佐久間に「経営者に向いてない」とバサッと斬られ、採用を増やしたいという晶に全てを丸投げする。そして面談当日に現れたのは朱里だった。お人よしな晶を頼って応募してきたのだった。晶の知り合いということであっさりと採用される朱里。晶と京谷が別れたことを知るとヨリを戻せと言ったり、すっかり友達のように晶に心を許している姿を見せる。初日から遅刻してきたりと、かの上野や松任谷を上回るダメっぷりを初っ端から見せてしまったが、たまたま訪れた京谷に晶と共に働いていることをわざと見せつけ、晶といたずらっぽくお互い見合って笑う姿は、同じ敵を持つ女の絆が生まれた感じでとても良かった。朱里はめんどくさいが味方につけると心強い存在かもしれない。前話から呉羽・朱里・夢子と晶が心を許せる範囲が広がって来た兆しが見えて、とても嬉しくなった。やはり晶に必要だったのは、一緒に笑える女友達だったのだ。

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その後5tapに訪れた京谷に晶が接した態度は、別れた男に対するそれで、座った位置も含めて距離感がとてもよかった。質問していいか聞く京谷に「嫌です。聞くだけなら聞いてもいいよ。答えるかわからないけど。」と返す様はまるで恒星のよう。前よりぐっと強気で自分にイニシアチブを持たせる言い方に、それまで受け身だった晶と別人のようで笑ってしまった。恒星を真似てるのかもしれないが、本来の晶は結構たくましくサバサバしてるはずと思ってるので、あれはあれで晶そのものなのかもしれないと思う。それにしても、面喰らった京谷が可愛かったな。鳩が豆鉄砲を食ったような驚いた顔・キョトン顔をさせたら田中圭の右に出る者はいないと思う笑。

 

不条理な現実

一方、会計監査の仕事中の恒星に一本の電話が。それは、行方不明中の兄・陽太(安井順平)が酔っ払いの財布から金を盗もうとして警察に捕まったという連絡だった。身元引受人として自分の事務所に連れ帰る恒星だったが、目を離した隙に陽太が逃走してしまう。偶然会った晶に事務所の留守を任せるも、その晩は結局見つからず、事務所に戻った恒星は晶に兄の話を始める。

恒星の兄・陽太は、福島で実家の海産物加工工場を継いだものの、震災の影響で経営が悪化、挙句の果てに悪徳金融から借金し、ついに会社は倒産してしまった。その現実から逃れるかのように行方をくらましていたのだった。幼い頃には「生き残り頭脳ゲーム」というボードゲームで一緒に遊んでいたが、いつも負かされていた兄にいつの間にかわざと負けられていると思った恒星。自分が助けることで兄がどんな顔するのか見たいと会社の借金を肩代わりしたようだが、助けたいという本心を兄弟のプライドで覆ってるようにも見えた。晶の言うように男のプライドってほんと面倒くさい笑。

恒星がヘルプとして監査を手伝っているチームに、以前手紙で経理部長の不正を告発した大熊は、変わらない現状に業を煮やし恒星に詰め寄る。ずっと自分を苦しめてきた部長に一矢報いたいという大熊に対し、恒星はこう言う。

恒星「一矢報いたい相手が目の前にいていいですね。経理部長が気に入らないなら声あげればいい。殴ればいいじゃないですか。目の前に敵がいるんだから、わかりやすく。本当に苦しいのは敵がだれかわからないことです。誰に一矢報いたらいいかわからない、誰に怒ったらいいかわからない。消化できない怒りの事ですよ。」

ここで兄の借金を肩代わりした時の様子が回想として入る。相手に深入りしないように距離を取り、一瞬の情に振り回されず、飄々と生きてきたように見える恒星が一矢報いたい相手とはなんだろうか。晶が選んだビールが岩手産だったり、野木さんの脚本はさりげなく3.11のあの時を絡めてくる。忘れてはいけないことを忘れないように。空飛ぶ広報室やアンナチュラルでも、あの震災で失ったものに今もなお苦しむ人たちに寄り添おうとしている。世の中の不条理に対するぶつけようのない怒り。誰もが一度は抱えてるのではないだろうか。

逃げた兄の陽太と晶が偶然出会い、さらに逃げようとするところを晶が「手を貸してほしい」と引き留める。サブローの働くラーメン屋に行き、晶は陽太に自分と似てるなら助けてと言われれば付いてくると思ったと笑って言う。一本取られたという顔で晶を見つめ、話を始める。陽太の人柄は「真面目に生きてきたんですけどね。誰にも迷惑かけずに。」という一言に尽きる気がする。愚直に生きてきただけなのだ。震災という突然降りかかった不条理な出来事に翻弄され、恒星と同じく、誰にぶつけていいのかわからない感情を抱え、もがいてきたのだ。そんな陽太は初対面の晶に32、583円を借りる。その端数まできっちりした金額は、残してきた妻へ送る家賃と現金書留代だった。

 

カイジとの対面

兄が置いてきた妻にお金を送ることで縁をつないでいたことを知った恒星は、現実を見ろと5tapで一人愚痴る。すると「現実だけでは生きていけません」と話しかけられる。そこには・・・橘カイジが。なんと演じているのは、ずんの飯尾さん!!!アンナチュラル来た―!!!ムーミンはどうしたーー!!!もっとクールイケメンかと思ってたーーー!!!笑 と、私を含めネットは大騒ぎだった。大成功だよ、プロデューサーさん。それはさておき、呉羽との出会い、そして仕事のことを嬉々として話すカイジに恒星は苛立ちを募らせる。

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カイジ「僕ね、昔ぶっ壊れたことがあるんです。少しでも現実から遠ざかりたくて、ひたすら家でゲームやってた。世界中には、今でも昔の僕みたいな人がいて、僕たちはその人たちのためにゲームを創る!その人たちがどんなに回り道をしても、夢を持って明るい所へ向かえるように。」

恒星「夢?」

カイジ「うん。ようこそ!新しい世界へ!」

恒星「おとぎ話ですね。住む家を理不尽に奪われて、風評被害で会社つぶれて、3万2千円すら工面できなくなった男がこの世にいて、どんな夢を語る?ゲーム?ないだろ。昔は苦労した?そんな話ね、どん底にいる人間からしたら成功者の戯言ですよ。」

カイジがこりゃだめだという顔をする。呉羽は夢を見たかったのかもしれない。子どもを産むという希望を絶たれた時、カイジなら別の夢を見つけ明るい所へ一緒に向かってくれる。だから恒星ではなく、カイジを選んだのだろう。恒星もそんな圧倒的な差を感じて、兄の事も絡めて、自分のふがいなさを八つ当たりしてしまったのではないだろうか。恒星の言っていることも「ほんとそれな」って感じではあるけど。

 

やっとできた兄弟喧嘩

陽太の窃盗が不起訴扱いになったこともあり、恒星は陽太を連れてあるところに向かう。それは埼玉の陽太の妻子がいるところだった。動揺した陽太は乗っていたタクシーを止め、途中で降りてしまう。それを連れ戻そうとする恒星は思わず、昔の話を持ち出す。兄も思わず反論し、二人は口論となる。小学校四年生の話から始まり、高校、そして父親が亡くなったときのことを、数珠つなぎで因縁エピソードを持ち出し「あの時お前だって●●だっただろ!」と運転手の制止もかまわず、二人はヒートアップする。

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運転手「お客さん、いい加減にしてください。」

恒星・陽太「うるさいな!」

恒星「今、兄貴と喧嘩してんだよ!誰に怒ったらいいかわかんないから。お互いに向き合って怒るしかないんだって。」

この流れに思わずうなってしまった。そうだ。恒星はずっと兄と向き合いたかったんだ。ボードゲームをしたあの頃のように。夢を描いていても、不条理な現実がそれを奪っていく。それを目の当たりにして湧き上がった感情を、恒星は抑えることで今までうまく生きてきたつもりだったけど、本当はずっと肉親である兄と分かち合いたかったんじゃないのか。兄弟姉妹がいない私は、とてもうらやましくなった。鼻の奥がツンとくる温かい喧嘩だ。

喧嘩の後、ぴんと張っていた意地が緩み、お互い素直になって下校時の道を並んで歩く姿はまるで子どもに還ったようで、ロードムービーのようだった。陽太が妻子と再会し、涙ながらに抱き合い、家族が再結合する様子を目の当たりにして、自分の想像を超えて、夢は終わっていなかったと知る恒星。終わっていると思った愛は実は続いていた。一度壊れたものでも、再生できると知った恒星は、解体された実家の報告書を見て、こみあげるものを押さえることはできなかった。バスの中で一人静かに涙する恒星の姿に私も泣いてしまった。今まで何を独りで戦ってたんだろう。徒労にも思えるその年月だが、きっとそれは必要な年月だったんだろう。

 

晶と恒星のその先

その後、帰って来た恒星を待ち構えていた晶。肩に下げた大きな手提げには「生き残り頭脳ゲーム」 。一緒にやろうとネットオークションで手に入れ、ビール持参で待っていたのだ。事務所でピザやチキンを頼み、ビールを片手にボードゲームに興じる恒星と晶。この二人を包む空気に前のようなよそよそしさはない。あと4秒見つめ合えばキスする空気だ。縛られていたものから、凝り固まっていた考えや、きっとこうなるだろうという余計な先読みから、二人はどんどん解放されていく。世界が前より明るく見えた時、目の前にいる晶と恒星がお互いにどう見えるのか。恒星が「俺、呉羽のこと好きだったんだな」と過去形で言ったことで、恒星の呉羽への気持ちはいったんここでピリオドが打たれたということかな。少なくとも、恒星は前より少し晶を見る目線に熱を帯びているような気がするけれど。そして、主体性を取り戻した晶もすっかり恒星に気を許しているようにも見えるけど。はたしてラブになるのだろうか。

残り2話。野木さんはどのようにこの個性的なキャラクターたちの結末を描くのか。見逃せない!(12/5の第9話はリアタイできないけど・・・録画追っかける!)

椎名林檎ライブ 不惑の余裕@さいたま11/24 感想

先日の11月24日、椎名林檎さんのライブ「(生)林檎博’18 -不惑の余裕-」におひとりさま参戦してきた。私にとってこの秋冬の大イベントの一つだったのだけど、本当に本当に最高だった。今回はその感想を少し書き記しておきたい。

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一貫した林檎ワールド。ライブ全体がスペクタクル巨編。

余裕ぶっこいてた自分をぶん殴りたい

正直、林檎さんの音楽を嗜み始めたのは約10年前のウォータリングキスミントCMでの「能動的三分間」から入ったミーハーなもんで、もうそんな愛好家さんたちの熱なんておよばねぇ・・今回ライブ初参戦だしおとなしくしてようって思いながら、林檎さんの今までのアルバムをシャッフルしながら高崎線に揺られひっそりと会場へ。そして14時ちょっと前に到着するともうグッズが結構売り切れてて。買おうと思っていたライブTシャツやハンカチも軒並みSOLDOUT。手旗も売り切れてしまっていた。そして来場している皆さんの華やかさたるや!パンクロックテイストの方、今回のライブグッズにもあるようなエスニックの雰囲気ただよう民族衣装の方や、林檎さんを彷彿とさせるお着物を着た方々など・・・様々なテイストの衣装に身を包んだ男女が集い、異様な熱気となっていた会場前。私は林檎をイメージした赤を取り入れたくらいであまりにも地味だった笑。ちっ、もっと可愛い格好してくりゃよかったぜ。まぁ、服装はライブには全然関係無いから好きな格好で来ればいいのだけど。林檎さんの壮絶な人気と愛好家の皆さんの気合いをなめてた自分を心の中でぶん殴りながら、気を引き締め直して、開演までの時間を待つ。

遠くても、全然大丈夫

今回会場はさいたまスーパーアリーナ。私の席は400レベル。遠い。かろうじて正面だったけど遠い。オペラグラス買ってよかった。オペラグラスの小さな5倍レンズの中に女神が光ってるのを豆粒サイズで確認できたレベル。でも正直、会場全体がキャンバスとなり林檎色をぶちまけられるような色鮮やかなレーザーや照明の演出、そして美しすぎるパネル映像をバックに林檎様の歌声が会場全体に響き渡り、姿が見えなくても体全身で林檎様を堪能できたから全然気にならなかった。とにかく凄かったんだよ。

圧倒的歌唱力と演出

約2時間MCはほとんどなく歌いっぱなし。あのキーで、あの声量で歌い続けられる体力に感嘆。CDで聴いているのとほぼ変わらない林檎さんの歌のクオリティの高さにおののく。そして生バンドの音が素晴らしくて…会場全体が揺れてるんじゃないかと思うほど響くサウンド。身体中に音楽の雨が降り注いでいる感覚に陥ったよ。その歌声とバックパネルの映像と照明が見事にマッチして、「ああ昇天するってこういうことか」とえもいわぬ多幸感に包まれた2時間だった。詳しくは今後出るであろう円盤を観て。

 

マスカラもファンデも取れるほど泣く、泣く、泣く

ライブでこんなに泣いたのは初めて。誕生日前日・20周年ということもあってゲストも豪華だったし、すべての楽曲が心揺さぶりまくった最高の2時間なんだけど、私の琴線に触れまくった号泣ポイントを思い出として記録しておきたい。

号泣①本能 with Mummy-D

行く前にセトリやネタバレ見なくて本当によかったと思った。イントロ流れた瞬間に体中がゾクゾクとし、歌声が聞こえると「うっわー林檎さんだぁぁ、夢じゃねぇ!!」って生の林檎さんを実感し、泣いた。これはいわゆる「嬉ション」だ。嬉しい気持ちが高まりすぎて泣くやつ。初っぱなから心持っていかれまくりのMummy-Dさんとのコラボ、最高にカッコよかった!!

号泣②どん底まで

この曲は『至上の人生』のカップリング曲なんだけど、女の子ぉぉぉってあふれ出る感じがすごく好きで。サビとかラストを朗々と歌い上げる感じがなんかグッと来てしまった。多分林檎さんの声質が私の脳内のどこか、アドレナリンみたいな感情爆発させる物質出す箇所にクリーンヒットしちゃうんだよな。あなたが~いない人生は~!って一緒に歌いながら、ポロポロ涙こぼしてしまった。

号泣③カーネーション

林檎さんのライブは初めてだったので、お子さんが声で出演されるなんてつゆ知らず。「若旦那に代わりまして若女将の5歳がお送りします。若旦那は17歳になりました。 母の林檎博にお越しいただきありがとうございます。繰り返し楽しんでもらいたいと母は考えております。今後とも母をよろしくお願い申し上げます。」という、なんて可愛らしいナレーションの後の『カーネーション』。林檎さんの“母”としての一面を垣間見てからの、この曲。憎い、憎すぎる演出!まるでおとぎの国のような美しい月夜と星空の映像をバックにピンクのドレスを着た林檎さんが美しすぎて泣いた。

号泣④人生は夢だらけ

もう、言わずもがな。日々一生懸命生きている全ての人への応援歌。この一曲自体、芸術的過ぎて圧倒される。残業帰りに銀座大通りをこの曲を聴きながら1人歩くと、下を向いていた目線が前を向き世界が拓ける気分になる。私自身、この曲に何度救われたことか。そんなベストオブ神曲を生で聞いた時にゃ、そりゃもう至高のひと時ですよ。泣くよ、そりゃ。林檎さん美しすぎるし、本当に女神降臨とはこういうこと。もうね、林檎教に入信した気分だった。Ma vie, mes reves!!

号泣⑤獣ゆく細道 with 宮本浩次

エレカシ宮本さんも駆けつけ、二人の最高のパフォーマンスを堪能できた。テレビで初めてこの曲聞いたときからすっかり虜なんだけど、生だとやはり迫力が違う。宮本さんの動きも生だと違う笑。二人の圧倒的歌唱力に心揺さぶられ過ぎて、もう気が付いたら泣いてた。かっけえぇぇ。たまらんんんっ。

号泣⑥昔の侍 with 宮本浩次

エレカシ宮本さんの持ち歌を林檎さんとコラボ。この曲も好きなのよー。林檎さんのイズムや死生観と合致しているというか、哀れな姿もなお美しいと思わせる歌詞と二人の歌声とマッチしていて、もう泣けた。こんな二人がアーティストとして日本にいることを誇りに思ってさらに泣けた。その二人をライブで生で観られたという奇跡に泣けた。

 

最後に

最初から最後まで楽しいの連続。一つのアトラクションに乗ったような、テーマパークを堪能したような気分だった。そして何より、こんな可愛くて美しくてカッコいい40歳がこの世にいるなんて!!ほんとうにすごいよ、椎名林檎さん。同じ女性として心から憧れずにいられない。私もあなたのように年を重ねていきたい。(難しいけど笑)

彼女から放たれる歌詞の言葉の一つ一つから「限りある人生、思いのまま生きて」というメッセージがビシビシ伝わってくる。ありきたりな言葉だけど「林檎さん、ありがとう」という気持ちでいっぱいになったライブだった。でも、あまりにも芸術性・エンターテイメント性に富んだ内容だったため、しばらく放心状態になった。これからどう面白おかしく生きていこうか。いや、でもありのままの私が普通に生きているだけできっと面白おかしいのだろう。数日経ってやっとそう納得して、今これを書いている。

また、機会が恵まれたら林檎さんのオーラを浴びに行きたい。とりあえず円盤買うかー。

 

以上!!ありがとうございました!!