なりきれない女の雑記

なりきれない女の雑記

現実と虚構に溺れる毎日。

宇多田ヒカルライブ「Hikaru Utada Laughter in the Dark 2018」感想

12月5日、待ちに待った宇多田ヒカル(以下宇多田さん)のライブに行ってきた。椎名林檎(以下林檎さん)に続き、なんて私は幸運なんだろう!興奮冷めやらぬうちにライブ感想書き留める。私の2018年はこれで終わった。もう悔いない。

※ネタバレ含みますのでご注意ください。

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入場するまで

会場は私にとってはおなじみの、さいたまスーパーアリーナ。2017年の星野源さんも先日の林檎さんも全部ここ。グッズもあらかじめネットで買っているし、後述する入場のスムーズさを振り返ると、正直もうちょい遅く行っても余裕だったなと思うが、開場1時間前の17時に到着。グッズ売り場を見てみると、事前購入の方が多いからか、17時時点でガラガラ。もともとTシャツとタオルは買っていたけど、実物を見てビーニー(ニット帽)が可愛かったので、その場でお買い上げ。早速被って気分をさらに盛り上げる。

一人参戦のデメリットは待ち時間が暇な事だ。携帯の充電はフルの方がいい。今回仕事を早退しての参戦だったが、携帯の充電するのを忘れていて、暇つぶしに携帯いじるのを控えなければいけなかった。なのでスタバに入ってコーヒーを買い、ベンチに座って宇多田さんの名曲をシャッフルで聴きながらひたすら人間観察をしていた。けやきひろばを行き交うのは30代以上のカップルが多く、ライブグッズのグレーのフーディーを着てる率が高かった。あまり奇抜な方はおらず、皆シンプルにお洒落な方が多かった印象。そういや林檎さんの時と比べて、全体的にトイレとかスタバが空いてたな。そうこうしていると入場の時間に。コーヒーを飲み干し、そそくさと会場に向かう。入場は本当にスムーズ。事前に登録しているマイページから電子チケットを表示させ、画面のQRコードを係員に読み取ってもらい顔認証も同時に受ける。一瞬だった、ほんと一瞬。

 

厳かな始まりから唯一無二の空間へ

今回も林檎さんの時と同じく席は400レベルだった。しかし、前回はほぼ正面でもかなり遠いところだったが、今回はステージの横だったので結構近かった。ステージ脇は見にくいが、宇多田さんは肉眼で見える。映像パネルも見やすい。なんだ、400レベルも悪くない。近くを見渡すと、結構年配の方も多かった。ご夫婦率高っ!羨ましいなぁ。うちの夫は宇多田さん聴かないからなぁ。そう思ってると両隣がまたカップルで埋まっていき、会場はあっという間に満席。熱気がすごかった。しかし、開演5分前あたりから会場のざわめきが静まり、厳かな雰囲気で宇多田さんの登場を待ちわびる。こんな光景今まで初めてかも。

そして会場が暗くなり、奈落から宇多田さんが。いきなり『あなた』が始まる。うわぁぁあ!って歓声あげる暇なんてない。ぞわわっと鳥肌が立つ。本当に“宇多田ヒカル”って存在するんだ・・・と目の前で彼女が歌っているという事実を脳がすぐ処理できなくて、一瞬フリーズした。会場にいた皆さんの時が止まっていた気がする。脳に彼女の歌声が浸みこみ、やっと現実だと認識したとき、気が付いたら涙がこぼれていた。序盤の音が若干現実味がない聞こえ方だったような気がする。でも12/4星野源ANNでも言ってたけど、私の座席がステージ横だったから聞こえ方に差があったのかもしれない。会場の温度や湿度で音は変わっていく生き物。数分したらどうでもよくなった。彼女の歌声がまるで清らかな水流のように会場を巡り、目の前に“宇多田ヒカルがいる”という奇跡の瞬間にいる幸せで満たしていく。

その後、『道』『traveling』『COLORS』というリズミカルな曲が続き、みんな思い思いに音に身を委ねていく。宇多田さんも「みんなももっと一緒に歌ってよー!」と煽る。私も全てを忘れてノリノリでリズムに乗る。少しMCが入ってシーンが変わってからのPrisoner Of Love。聞きたかったからもうゾクゾクするほど嬉しくて、声にならない声が出てしまう。続いての『Kiss&Cry』では、ラストが『Can you Keep A Secret』とリミックスされてて超絶かっこよかった。自分の語彙力の足らなさが悔しくなるほど、最高で贅沢な空間だった。

 

ゆるゆる、そしてウルウルさせるMC

MCでは、彼女らしさが際立った。「あ、お水飲もうとしたら明るくなっちゃった。」とゆるーく始まり、挨拶。そして1日目のMCで言ったことの訂正から始まる。「さいたまスーパーアリーナでライブをしたのが17歳の時の2000年で18年ぶりかもと言ったら、その2000年は千葉マリンスタジアムで、さいたまスーパーアリーナは2006年でやったという・・全部間違ってたよ。あはは。」と会場が笑いに包まれ、和む。MC慣れしていなくてシャイな感じがとても可愛らしくて、もっともっと大好きになってしまった。特に、今回の20周年記念のツアーに際してのMCがとても印象的だった。

活動休止と発表したときにもうライブ見れないのかと思った人もいるだろうし、私もその時はライブやるだろうなと思ってたけど、そのあと色々あって人前や明るいライトの前に出るのが無理になった時があった。そんな中ライブができるのか心配になったけど、やりだしたら今までで一番ライブを楽しんでる状態にいるんだ。みんなひっくるめて20年ありがとう。ここでライブできてることが嬉しい。ほんとうにありがとうございます。

(記憶をたどった内容なのであしからず笑)

そう言ってくれたのだ。泣くだろ。泣くよね。私こそあなたのおかげで生きてこれました本当にありがとうだよーーと流れる涙をタオルで押さえてたら、「うん。じゃ、次いきます」って1秒で切り替わって、さっきまでのふにゃんとした話し声から一転、最高の歌声を聞かせてくれるんですよ。こっちはハッ!!ってなるんですよ。ほんと化け物ですよ。(褒めてる)

 

シンプルな演出だからこそ際立つ彼女の凄さ

ライブ自体はとにかくシンプル。衣装は前半は黒のロングドレス・後半は黒白のアシンメトリードレス・最後のアンコールはライブTシャツ(黒)に黒いパンツという3つのみ。シンプルなドレスから見える少し筋肉質な背中と腕がセクシーだった。この腕にお子さん抱えてるんだな、となんかグッときちゃったよ。照明も曲に合わせたカラーで彩る程度で、特殊なレーザーとかはない。映像も歌っている宇多田さんの切ない表情を映してくれる。『ともだち』『Too Proud』『誓い』では近未来的な音楽と照明と宇多田さんの歌声がもう見事に混ざり合って、最高のクラブシーンのようになっていた。もちろん全体において素晴らしくて、ここは日本か?埼玉じゃなくて実はニューヨークなんじゃないのか?と錯覚に陥るほど、もう最っっっ高にかっこよかった!!!!

林檎さんの時は会場全体がテーマパークのようで全体に目と耳が向いていたが、今回はもう耳も目もすべてが宇多田さんに一点集中。正反対。もちろんどっちがいいとか甲乙をつけるつもりはまったくない。どちらもとても良い。大好き。

前半・後半を分けるところでは、又吉直樹さんとの「絶望の中の笑い」をテーマにした対談コントが流れ、会場が笑いに包まれる。脚本も又吉さん。「SONGSスペシャル」でも対談の相手に又吉さんを指名したほどだから、よほど宇多田さんと又吉さんには通じるものがあるんだろうなぁ。たしかに文学的な価値観とか結構似ていそう。シュールで面白い演出だったなぁ。ぜひ円盤に収録してほしい。セリフ棒読みの宇多田さんが暴挙に出るところが本当に最高だから。スパーン!!

 

彼女と私の20年間に想いが爆発する2時間半

林檎さんの時もこれでもかと泣いたんだけど、私にとっての本丸・宇多田ヒカルはやはり想像以上に泣いた。彼女が活動してきた20年は私にとっても激動の20年で、彼女の曲一つ一つに思い入れがある。イントロが流れるともう走馬灯のように当時の想いがよみがえり、涙腺ダムに水分が溜まっていく。歌詞と気持ちがリンクしていき、曲がクライマックスに差し掛かったところでついに涙腺ダム崩壊。目からも鼻からも放水。両隣カップルに挟まれた単独アラサー女が一人ズビズビ言ってて少々恥ずかしかったぜ。それを数回。いやほとんどか。笑

前半部分の過去曲SAKURAドロップス『光』では、昔の淡い初恋を思い出すなど、過去を思い出し甘酸っぱい気分でホロリと涙したが、後半では今ここで彼女の歌を聴いているという現実や、20年間応援してきた自分の20年に想いを馳せて、セルフ感動して泣いてしまった笑。特にセンターステージでの真夏の通り雨』『花束を君には本当に泣きすぎた。宇多田さんが亡き母を想って書かれた歌、辛い気持ち乗り越えて今こうして私たちの前で歌ってくれてるんだなと思って泣けたし、私もこの20年間色々乗り越えたなぁと思って、こんな最高のご褒美に恵まれて今まで生きててよかったなぁと思ってむせび泣いてしまった。しかもその後畳み掛けるように『Forevermore』、そして『First love』『初恋』と続くからもう目が…水分出すぎてカラカラに。

 

アンコール、そして最高のフィナーレ

これが最後の曲・・・と『Play A Love Song』で軽やかにしめくくる。この曲も大好きなんだよなぁ。長い冬が終わる瞬間〜♪からの開放感がたまらない。照明もレインボーカラーで楽園感があってとてもよかった。夢のように曲が終わってしまい、一旦放心。いや、これで終わって欲しくない!!と思って手拍子して待っていたら、しばらくして「呼んでくれてありがとー!」とゆるーく戻ってきてくれた宇多田さん。和む。

歌わないかなーと思っていた『俺の彼女』がここで。低音がお腹に響いて身震いするほどかっこいい。ちょうど目の前に友達同士に思われる男性二人組がいて、男の人からしたらどんな風に聞こえる曲のかなーって少し気になったりして。そしてそこからの『Automatic』!!!アンコールでまたテンションぶち上がる。ちょっとファンクな感じのアレンジでもうグルーヴ感が最高だった。デビュー時の若々しさも大好きだけど、35歳の彼女が歌う『Automatic』も味わい深くて、また泣いてしまった。泣きながら自動的に揺れる私。もう誰にも止められない笑。

そして名残惜しくも本当にラストへ・・・。『Goodbye Happiness』という選曲が見事の一言。この幸せからサヨナラしなきゃいけない現実を突きつけられる笑。あの頃には戻れないけれど、私はもう一人じゃない。私は宇多田ヒカルというこの時代の奇跡を目の当たりにしたのだから・・・。そんな多幸感を最後に残して、女神は控えめに投げキスをして去っていった。

 

最後に

はあ・・だいぶ長くなっちまったぜ。読みにくくてすみません。もうね、長くもなるんですよ。ずっと会いたかったんだから。でも、本当にこの夢の時間が終わって思ったことはこれだった。

宇多田ヒカルがいるこの時代に生まれてよかった。

そして、これからも彼女の歌と共に生きよう。

 

 

以上!!

ありがとうございました!!

『獣になれない私たち』恒星が背負ってきた荷物を下ろす時

“自分がそうしたかったから自分で決めた”というセリフが印象的だった、けもなれ第8話。自分で決めた結果が不条理なものだったとして、それを受け入れることはできるだろうか。私はその先に夢を見ることはできるだろうか。恒星の過去に踏み込み、晶と恒星の距離もさらに近くなった回。そしてやっとあの登場人物の正体が明かされた。正直、かなり予想外のキャスティングだったので、内容一回吹っ飛んだ人も多いのでは笑。※以下ネタバレ含みますのでご注意ください。

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5tapで橘カイジの記事を見せるタクラマカン。恒星は呉羽の夫・橘カイジの会社の上場を手伝うことを決めたものの、カイジにドタキャンを繰り返されていることを明かす。「呉羽が乗り気なだけで、本当はカイジは恒星を意識していて会いたくないのではないか?」と仮説を立てる晶。京谷と別れ、懐には「退職願」という爆弾を隠していることを笑いながら明かす晶は、まるで憑き物が取れたようにスッキリしている。恒星と話す姿に前とは異なる心の余裕が少し伺える。そんな中、恒星に一本の連絡が入る。福島の実家の取り壊しが決まったということだった。高校まで恒星が育ったその土地は震災時の原発事故の影響で立ち入り禁止となり、空き家となった数年で荒れ果てていた。その話をする兄も今は行方不明になっていた。

 

晶と朱里

晶は懐に忍ばせた爆弾の効果もあってか、九十九に対しても果敢に業務改善を打診する。九十九は信頼するベテランSE佐久間に「経営者に向いてない」とバサッと斬られ、採用を増やしたいという晶に全てを丸投げする。そして面談当日に現れたのは朱里だった。お人よしな晶を頼って応募してきたのだった。晶の知り合いということであっさりと採用される朱里。晶と京谷が別れたことを知るとヨリを戻せと言ったり、すっかり友達のように晶に心を許している姿を見せる。初日から遅刻してきたりと、かの上野や松任谷を上回るダメっぷりを初っ端から見せてしまったが、たまたま訪れた京谷に晶と共に働いていることをわざと見せつけ、晶といたずらっぽくお互い見合って笑う姿は、同じ敵を持つ女の絆が生まれた感じでとても良かった。朱里はめんどくさいが味方につけると心強い存在かもしれない。前話から呉羽・朱里・夢子と晶が心を許せる範囲が広がって来た兆しが見えて、とても嬉しくなった。やはり晶に必要だったのは、一緒に笑える女友達だったのだ。

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その後5tapに訪れた京谷に晶が接した態度は、別れた男に対するそれで、座った位置も含めて距離感がとてもよかった。質問していいか聞く京谷に「嫌です。聞くだけなら聞いてもいいよ。答えるかわからないけど。」と返す様はまるで恒星のよう。前よりぐっと強気で自分にイニシアチブを持たせる言い方に、それまで受け身だった晶と別人のようで笑ってしまった。恒星を真似てるのかもしれないが、本来の晶は結構たくましくサバサバしてるはずと思ってるので、あれはあれで晶そのものなのかもしれないと思う。それにしても、面喰らった京谷が可愛かったな。鳩が豆鉄砲を食ったような驚いた顔・キョトン顔をさせたら田中圭の右に出る者はいないと思う笑。

 

不条理な現実

一方、会計監査の仕事中の恒星に一本の電話が。それは、行方不明中の兄・陽太(安井順平)が酔っ払いの財布から金を盗もうとして警察に捕まったという連絡だった。身元引受人として自分の事務所に連れ帰る恒星だったが、目を離した隙に陽太が逃走してしまう。偶然会った晶に事務所の留守を任せるも、その晩は結局見つからず、事務所に戻った恒星は晶に兄の話を始める。

恒星の兄・陽太は、福島で実家の海産物加工工場を継いだものの、震災の影響で経営が悪化、挙句の果てに悪徳金融から借金し、ついに会社は倒産してしまった。その現実から逃れるかのように行方をくらましていたのだった。幼い頃には「生き残り頭脳ゲーム」というボードゲームで一緒に遊んでいたが、いつも負かされていた兄にいつの間にかわざと負けられていると思った恒星。自分が助けることで兄がどんな顔するのか見たいと会社の借金を肩代わりしたようだが、助けたいという本心を兄弟のプライドで覆ってるようにも見えた。晶の言うように男のプライドってほんと面倒くさい笑。

恒星がヘルプとして監査を手伝っているチームに、以前手紙で経理部長の不正を告発した大熊は、変わらない現状に業を煮やし恒星に詰め寄る。ずっと自分を苦しめてきた部長に一矢報いたいという大熊に対し、恒星はこう言う。

恒星「一矢報いたい相手が目の前にいていいですね。経理部長が気に入らないなら声あげればいい。殴ればいいじゃないですか。目の前に敵がいるんだから、わかりやすく。本当に苦しいのは敵がだれかわからないことです。誰に一矢報いたらいいかわからない、誰に怒ったらいいかわからない。消化できない怒りの事ですよ。」

ここで兄の借金を肩代わりした時の様子が回想として入る。相手に深入りしないように距離を取り、一瞬の情に振り回されず、飄々と生きてきたように見える恒星が一矢報いたい相手とはなんだろうか。晶が選んだビールが岩手産だったり、野木さんの脚本はさりげなく3.11のあの時を絡めてくる。忘れてはいけないことを忘れないように。空飛ぶ広報室やアンナチュラルでも、あの震災で失ったものに今もなお苦しむ人たちに寄り添おうとしている。世の中の不条理に対するぶつけようのない怒り。誰もが一度は抱えてるのではないだろうか。

逃げた兄の陽太と晶が偶然出会い、さらに逃げようとするところを晶が「手を貸してほしい」と引き留める。サブローの働くラーメン屋に行き、晶は陽太に自分と似てるなら助けてと言われれば付いてくると思ったと笑って言う。一本取られたという顔で晶を見つめ、話を始める。陽太の人柄は「真面目に生きてきたんですけどね。誰にも迷惑かけずに。」という一言に尽きる気がする。愚直に生きてきただけなのだ。震災という突然降りかかった不条理な出来事に翻弄され、恒星と同じく、誰にぶつけていいのかわからない感情を抱え、もがいてきたのだ。そんな陽太は初対面の晶に32、583円を借りる。その端数まできっちりした金額は、残してきた妻へ送る家賃と現金書留代だった。

 

カイジとの対面

兄が置いてきた妻にお金を送ることで縁をつないでいたことを知った恒星は、現実を見ろと5tapで一人愚痴る。すると「現実だけでは生きていけません」と話しかけられる。そこには・・・橘カイジが。なんと演じているのは、ずんの飯尾さん!!!アンナチュラル来た―!!!ムーミンはどうしたーー!!!もっとクールイケメンかと思ってたーーー!!!笑 と、私を含めネットは大騒ぎだった。大成功だよ、プロデューサーさん。それはさておき、呉羽との出会い、そして仕事のことを嬉々として話すカイジに恒星は苛立ちを募らせる。

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カイジ「僕ね、昔ぶっ壊れたことがあるんです。少しでも現実から遠ざかりたくて、ひたすら家でゲームやってた。世界中には、今でも昔の僕みたいな人がいて、僕たちはその人たちのためにゲームを創る!その人たちがどんなに回り道をしても、夢を持って明るい所へ向かえるように。」

恒星「夢?」

カイジ「うん。ようこそ!新しい世界へ!」

恒星「おとぎ話ですね。住む家を理不尽に奪われて、風評被害で会社つぶれて、3万2千円すら工面できなくなった男がこの世にいて、どんな夢を語る?ゲーム?ないだろ。昔は苦労した?そんな話ね、どん底にいる人間からしたら成功者の戯言ですよ。」

カイジがこりゃだめだという顔をする。呉羽は夢を見たかったのかもしれない。子どもを産むという希望を絶たれた時、カイジなら別の夢を見つけ明るい所へ一緒に向かってくれる。だから恒星ではなく、カイジを選んだのだろう。恒星もそんな圧倒的な差を感じて、兄の事も絡めて、自分のふがいなさを八つ当たりしてしまったのではないだろうか。恒星の言っていることも「ほんとそれな」って感じではあるけど。

 

やっとできた兄弟喧嘩

陽太の窃盗が不起訴扱いになったこともあり、恒星は陽太を連れてあるところに向かう。それは埼玉の陽太の妻子がいるところだった。動揺した陽太は乗っていたタクシーを止め、途中で降りてしまう。それを連れ戻そうとする恒星は思わず、昔の話を持ち出す。兄も思わず反論し、二人は口論となる。小学校四年生の話から始まり、高校、そして父親が亡くなったときのことを、数珠つなぎで因縁エピソードを持ち出し「あの時お前だって●●だっただろ!」と運転手の制止もかまわず、二人はヒートアップする。

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運転手「お客さん、いい加減にしてください。」

恒星・陽太「うるさいな!」

恒星「今、兄貴と喧嘩してんだよ!誰に怒ったらいいかわかんないから。お互いに向き合って怒るしかないんだって。」

この流れに思わずうなってしまった。そうだ。恒星はずっと兄と向き合いたかったんだ。ボードゲームをしたあの頃のように。夢を描いていても、不条理な現実がそれを奪っていく。それを目の当たりにして湧き上がった感情を、恒星は抑えることで今までうまく生きてきたつもりだったけど、本当はずっと肉親である兄と分かち合いたかったんじゃないのか。兄弟姉妹がいない私は、とてもうらやましくなった。鼻の奥がツンとくる温かい喧嘩だ。

喧嘩の後、ぴんと張っていた意地が緩み、お互い素直になって下校時の道を並んで歩く姿はまるで子どもに還ったようで、ロードムービーのようだった。陽太が妻子と再会し、涙ながらに抱き合い、家族が再結合する様子を目の当たりにして、自分の想像を超えて、夢は終わっていなかったと知る恒星。終わっていると思った愛は実は続いていた。一度壊れたものでも、再生できると知った恒星は、解体された実家の報告書を見て、こみあげるものを押さえることはできなかった。バスの中で一人静かに涙する恒星の姿に私も泣いてしまった。今まで何を独りで戦ってたんだろう。徒労にも思えるその年月だが、きっとそれは必要な年月だったんだろう。

 

晶と恒星のその先

その後、帰って来た恒星を待ち構えていた晶。肩に下げた大きな手提げには「生き残り頭脳ゲーム」 。一緒にやろうとネットオークションで手に入れ、ビール持参で待っていたのだ。事務所でピザやチキンを頼み、ビールを片手にボードゲームに興じる恒星と晶。この二人を包む空気に前のようなよそよそしさはない。あと4秒見つめ合えばキスする空気だ。縛られていたものから、凝り固まっていた考えや、きっとこうなるだろうという余計な先読みから、二人はどんどん解放されていく。世界が前より明るく見えた時、目の前にいる晶と恒星がお互いにどう見えるのか。恒星が「俺、呉羽のこと好きだったんだな」と過去形で言ったことで、恒星の呉羽への気持ちはいったんここでピリオドが打たれたということかな。少なくとも、恒星は前より少し晶を見る目線に熱を帯びているような気がするけれど。そして、主体性を取り戻した晶もすっかり恒星に気を許しているようにも見えるけど。はたしてラブになるのだろうか。

残り2話。野木さんはどのようにこの個性的なキャラクターたちの結末を描くのか。見逃せない!(12/5の第9話はリアタイできないけど・・・録画追っかける!)

椎名林檎ライブ 不惑の余裕@さいたま11/24 感想

先日の11月24日、椎名林檎さんのライブ「(生)林檎博’18 -不惑の余裕-」におひとりさま参戦してきた。私にとってこの秋冬の大イベントの一つだったのだけど、本当に本当に最高だった。今回はその感想を少し書き記しておきたい。

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一貫した林檎ワールド。ライブ全体がスペクタクル巨編。

余裕ぶっこいてた自分をぶん殴りたい

正直、林檎さんの音楽を嗜み始めたのは約10年前のウォータリングキスミントCMでの「能動的三分間」から入ったミーハーなもんで、もうそんな愛好家さんたちの熱なんておよばねぇ・・今回ライブ初参戦だしおとなしくしてようって思いながら、林檎さんの今までのアルバムをシャッフルしながら高崎線に揺られひっそりと会場へ。そして14時ちょっと前に到着するともうグッズが結構売り切れてて。買おうと思っていたライブTシャツやハンカチも軒並みSOLDOUT。手旗も売り切れてしまっていた。そして来場している皆さんの華やかさたるや!パンクロックテイストの方、今回のライブグッズにもあるようなエスニックの雰囲気ただよう民族衣装の方や、林檎さんを彷彿とさせるお着物を着た方々など・・・様々なテイストの衣装に身を包んだ男女が集い、異様な熱気となっていた会場前。私は林檎をイメージした赤を取り入れたくらいであまりにも地味だった笑。ちっ、もっと可愛い格好してくりゃよかったぜ。まぁ、服装はライブには全然関係無いから好きな格好で来ればいいのだけど。林檎さんの壮絶な人気と愛好家の皆さんの気合いをなめてた自分を心の中でぶん殴りながら、気を引き締め直して、開演までの時間を待つ。

遠くても、全然大丈夫

今回会場はさいたまスーパーアリーナ。私の席は400レベル。遠い。かろうじて正面だったけど遠い。オペラグラス買ってよかった。オペラグラスの小さな5倍レンズの中に女神が光ってるのを豆粒サイズで確認できたレベル。でも正直、会場全体がキャンバスとなり林檎色をぶちまけられるような色鮮やかなレーザーや照明の演出、そして美しすぎるパネル映像をバックに林檎様の歌声が会場全体に響き渡り、姿が見えなくても体全身で林檎様を堪能できたから全然気にならなかった。とにかく凄かったんだよ。

圧倒的歌唱力と演出

約2時間MCはほとんどなく歌いっぱなし。あのキーで、あの声量で歌い続けられる体力に感嘆。CDで聴いているのとほぼ変わらない林檎さんの歌のクオリティの高さにおののく。そして生バンドの音が素晴らしくて…会場全体が揺れてるんじゃないかと思うほど響くサウンド。身体中に音楽の雨が降り注いでいる感覚に陥ったよ。その歌声とバックパネルの映像と照明が見事にマッチして、「ああ昇天するってこういうことか」とえもいわぬ多幸感に包まれた2時間だった。詳しくは今後出るであろう円盤を観て。

 

マスカラもファンデも取れるほど泣く、泣く、泣く

ライブでこんなに泣いたのは初めて。誕生日前日・20周年ということもあってゲストも豪華だったし、すべての楽曲が心揺さぶりまくった最高の2時間なんだけど、私の琴線に触れまくった号泣ポイントを思い出として記録しておきたい。

号泣①本能 with Mummy-D

行く前にセトリやネタバレ見なくて本当によかったと思った。イントロ流れた瞬間に体中がゾクゾクとし、歌声が聞こえると「うっわー林檎さんだぁぁ、夢じゃねぇ!!」って生の林檎さんを実感し、泣いた。これはいわゆる「嬉ション」だ。嬉しい気持ちが高まりすぎて泣くやつ。初っぱなから心持っていかれまくりのMummy-Dさんとのコラボ、最高にカッコよかった!!

号泣②どん底まで

この曲は『至上の人生』のカップリング曲なんだけど、女の子ぉぉぉってあふれ出る感じがすごく好きで。サビとかラストを朗々と歌い上げる感じがなんかグッと来てしまった。多分林檎さんの声質が私の脳内のどこか、アドレナリンみたいな感情爆発させる物質出す箇所にクリーンヒットしちゃうんだよな。あなたが~いない人生は~!って一緒に歌いながら、ポロポロ涙こぼしてしまった。

号泣③カーネーション

林檎さんのライブは初めてだったので、お子さんが声で出演されるなんてつゆ知らず。「若旦那に代わりまして若女将の5歳がお送りします。若旦那は17歳になりました。 母の林檎博にお越しいただきありがとうございます。繰り返し楽しんでもらいたいと母は考えております。今後とも母をよろしくお願い申し上げます。」という、なんて可愛らしいナレーションの後の『カーネーション』。林檎さんの“母”としての一面を垣間見てからの、この曲。憎い、憎すぎる演出!まるでおとぎの国のような美しい月夜と星空の映像をバックにピンクのドレスを着た林檎さんが美しすぎて泣いた。

号泣④人生は夢だらけ

もう、言わずもがな。日々一生懸命生きている全ての人への応援歌。この一曲自体、芸術的過ぎて圧倒される。残業帰りに銀座大通りをこの曲を聴きながら1人歩くと、下を向いていた目線が前を向き世界が拓ける気分になる。私自身、この曲に何度救われたことか。そんなベストオブ神曲を生で聞いた時にゃ、そりゃもう至高のひと時ですよ。泣くよ、そりゃ。林檎さん美しすぎるし、本当に女神降臨とはこういうこと。もうね、林檎教に入信した気分だった。Ma vie, mes reves!!

号泣⑤獣ゆく細道 with 宮本浩次

エレカシ宮本さんも駆けつけ、二人の最高のパフォーマンスを堪能できた。テレビで初めてこの曲聞いたときからすっかり虜なんだけど、生だとやはり迫力が違う。宮本さんの動きも生だと違う笑。二人の圧倒的歌唱力に心揺さぶられ過ぎて、もう気が付いたら泣いてた。かっけえぇぇ。たまらんんんっ。

号泣⑥昔の侍 with 宮本浩次

エレカシ宮本さんの持ち歌を林檎さんとコラボ。この曲も好きなのよー。林檎さんのイズムや死生観と合致しているというか、哀れな姿もなお美しいと思わせる歌詞と二人の歌声とマッチしていて、もう泣けた。こんな二人がアーティストとして日本にいることを誇りに思ってさらに泣けた。その二人をライブで生で観られたという奇跡に泣けた。

 

最後に

最初から最後まで楽しいの連続。一つのアトラクションに乗ったような、テーマパークを堪能したような気分だった。そして何より、こんな可愛くて美しくてカッコいい40歳がこの世にいるなんて!!ほんとうにすごいよ、椎名林檎さん。同じ女性として心から憧れずにいられない。私もあなたのように年を重ねていきたい。(難しいけど笑)

彼女から放たれる歌詞の言葉の一つ一つから「限りある人生、思いのまま生きて」というメッセージがビシビシ伝わってくる。ありきたりな言葉だけど「林檎さん、ありがとう」という気持ちでいっぱいになったライブだった。でも、あまりにも芸術性・エンターテイメント性に富んだ内容だったため、しばらく放心状態になった。これからどう面白おかしく生きていこうか。いや、でもありのままの私が普通に生きているだけできっと面白おかしいのだろう。数日経ってやっとそう納得して、今これを書いている。

また、機会が恵まれたら林檎さんのオーラを浴びに行きたい。とりあえず円盤買うかー。

 

以上!!ありがとうございました!!

 

 

 

 

『獣になれない私たち』晶は晶の人生を生きることにした

晶が本来の逞しさを取り戻した気がする、けもなれ第7話。長く暗いトンネルからやっと外の世界が見え始めた回だった。10月10日の初回から今までで、初めて後味の良い水曜23時を迎えたんじゃないだろうか。晶が新しく生まれるのに立ち会った気分で、私自身とても清々しかった。※以下ネタバレ含みます。そしてすんごく長いです。ご注意ください。

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恒星のお金の出所とウソと本音

呉羽の店からの帰り、晶と恒星はいつもと違うバーに立ち寄る。恒星が晶の分も支払ってくれたお金の出所について晶は尋ねるが、恒星は粉飾に関わった見返りということを80年代の映画になぞらえて、嘘か本当かわからないまま濁す。晶が真面目に話そうとしない恒星をたしなめると、逆に京谷に本音で話せたのかと聞かれる。以前は京谷に本音を話し、生まれて初めて人に愛される幸せを感じていた晶。それなのに、いつのまにか京谷に対して本音を話せなくなっていたのだ。それを笑い話のように話す晶を恒星は真面目に聞いている。そういう二人こそ本音で話し合っているということにいつ気が付くんだろう。そんな風に少しそわそわしながら観ている私。

 

京谷にとっての幸せと責任

場面は変わって、京谷は上司の橋爪部長とお昼を食べていた。「バカかお前!!」という橋爪部長の怒号が店内に響く。京谷と晶、そして朱里との関係を聞いた橋爪が京谷を一喝したのだ。ナイス部長。本当にグッジョブ。もっと言ってやって笑。朱里を引き入れたのは自分だから面倒見るのは自分の責任、晶との関係をちゃんとするのも自分の責任・・・と「責任」ばかり口にする京谷に、橋爪部長は疑問を投げかける。

部長「お前のそれなんなの?責任責任って」

京谷「そういうもん・・・でしょ?」

部長「深海さんのこと好きなの?」

京谷「好きですよ。好きじゃなかったらこんな苦労しませんよ。」

部長「お前の幸せって何?人生の目標。」

京谷「子ども欲しいし、幸せな家庭・・・え?そういうもんでしょ?」

部長「お前が深海さん選んだのわかる気がするわ。」

そう、京谷は「幸せ=家や子どもを持ち、家庭を築く」というステレオタイプのもと「愛する=相手を幸せにするという責任を果たすこと」と考えているのだ。自分が両親に愛され何不自由なく暮らしてきた環境を普通と捉え、「幸せとはそういうもんでしょ」と世間も自分と同じように考えているはずと思っている。だからこそ、朱里に「愛せなくてごめん」と言い、理想的な女性である晶を選ぼうとしている。もちろん、京谷の考えが悪いわけではない。むしろきっとそういう人って多い。しかし、京谷がだめなのは、純真無垢なのか、鈍感というか、目の前の晶の表面的な部分しか見えていないところだ。晶が恒星と話している内容なんて微塵も想像できていないだろう。いつも自分にポジティブな面を見せてくれる晶が可愛くて好きなのだ。だから前回のように自分が理想としている晶と違う面が見えたときに「可愛くない」と言い放つことができる。器が広いけど浅い。まったくもっておめでたい。ほんと中の人が田中圭じゃなかったら今頃相模湾の藻屑になっていたところだ笑。

 

晶に必要なものは「女友達」

他者の目線と言葉は大事だ。晶には自分を客観視してくれる女友達がいたほうがいい。時に叱咤し、時に褒めてくれるような。呉羽や夢子がそんな存在になれば結構最強だと思うのだが・・・。

魔法の言葉

晶の心に光が差し始めたのは呉羽とのシーン。京谷と関係を持ったことを100ハグで許してと言う呉羽のノリにほだされ、1000ハグで許すことにした晶。そうか、ハグで許しちゃうのかと思ったけども、晶にとってはもう京谷への気持ちが離れてるんだろうなということがここでわかる。前回の呉羽の告白で、女として共感できる部分に同盟的な感情を持ったのだろうか。素直に隣に座ることを許し、一緒にお酒を飲んでいる。話の中で、本音で相手と向き合いながらも奔放に見える彼女をうらやむ晶に、呉羽は「私は晶好きだよ」と言う。晶が欠点だと思っている「周りの事を考えすぎるところ」を「特殊能力」「武器」と昇華してくれるのだ。ちょうど僕キセでも好きなところ100個あるというくだりがあった。自己肯定は自分だけではできない。他者の言葉に救われる。呉羽はそれがナチュラルにできる人なのだ。仲良さそうに5tapを後にした二人を見て、恒星同様、私も良いものを見たと思った。

夢子のバランス感覚 

そして、松任谷夢子と上野のやりとりでも、晶はハッとさせられる。打ち合わせの準備と言ってカメラのない会議室に逃げ込んだ夢子と上野は、先日の樫村地所との会合中に立ち聞きした晶と京谷のやりとりについて話している。

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夢子「彼氏にあんなこと言われたら、私だったら立ち直れないかも。<中略~会合の店前での晶と京谷のやりとり~>『かわいくない』だよ?『かわいくない』!深海さんに乗り移って代わりに言ってあげたい。『かわいくなくて何が悪いんじゃボケ!うっさいわ!』って。」

上野「でも僕もちょっと思っちゃいました。深海さん笑ってるほうがいいなって。」

夢子「なら、自分で笑わせなさいよ。散々深海さんに迷惑掛けといて何言ってんの。」

一言で夢子、最高。あんなに同僚として最悪に感じられた夢子の株が、ここまで爆アゲになるとは思わなかった笑。何より演じる伊藤沙莉ちゃんの絶妙な演技が素晴らしい。本当に夢子は良い子なんだよな。自分をよくわかっている。一度自分に絶望して、周りとの付き合い方を変えた賢い子なんだと思う。きっとこの職場じゃなかったら、多少抜けていても彼女の洞察力などの長所を見出して上手く伸ばしてくれる上司に引き上げられ、活躍できたかもしれない。そして、晶がもし夢子に心を開くチャンスがあるなら、最強の女友達になるかもしれない。

 

誰の人生を生きてるんだろうね

晶のため?に災難続きの恒星

一方で、朱里は相変わらず困った女だ。晶が立て替えた飲み代と勝手に持ち帰った千春からの晶への荷物を届けに、深夜に晶の家で待ち伏せする。そして、終電もお金もないからと、図々しく晶の家の玄関前で寝ようとするので困った晶はやむなく部屋に泊まらせる。(ウサギは大丈夫かとTwitterのTLに心配のツイートが並ぶ笑。)晶がいない5tapに堂々と顔も見せ、恒星と対峙する。

朱里「みんな深海晶が好きだよね。気が利いて愛されるキラキラ女子。」

恒星「そう思うよな。だけど、実際の深海晶はいつも無理して死にそうな、周りに都合よく使われるギリギリ女。」

朱里「は?」

恒星「君さ、自分が一番不幸だと思ってるでしょ。」

朱里(恒星をにらみつける)

恒星「不幸の背比べは楽しいですか?」

朱里(飲んでいた自分のビールを恒星にぶっかける)

恒星よ、いつもいつも晶のために災難に遭っているね。駆け付けた晶にその後「余計なこと言い過ぎ」と窘められるけど、私は言いたい。晶、恒星は何も悪くないの笑笑。恒星の良いところは、京谷に殴られたり朱里にビールぶっかけられてることを晶本人に言わないところ。言葉はナイフだけど本当は優しい。というより前より優しい気がする。表面的には社交的に見えて、本当は人と深く関わらないようにしていた恒星にとって、ここまで他人のために感情的になったり、口を出したりする行為はなかったんじゃないだろうか。恒星の中でも何かが変わり始めているのを感じた。

晶と朱里

朱里が、恒星に痛いところを突かれ晶の家(そもそも自分の家ではないが笑)に逃げ帰り、電気も付けずうずくまっているところに、晶がビールを持って帰ってくる。本音で話したいと言う晶に、朱里は「バカじゃない?」と跳ね返す。

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「私と朱里さんって似てると思う。」

朱里「どこが!?全っ然違う!」

「性格は全然違うけど、京谷と出会った順番が逆だったら、私が朱里さんだったかもしれない。朱里さんって帰れる実家ないんだよね?私も。それでもがんばって働いて、毎日笑顔で、みんなに頼られて、前向きに生きてる。」

朱里「イヤミ?」

「“そういう深海晶”が京谷は好きだったんだよ。目の前で苦しんでる朱里さんが、言ってしまえば重くてどうにもならないから。その代わり?だから私は朱里さんとは正反対の、明るくて物わかりの良い優しい女を続けてた。京谷の前でずっと。」

朱里「私は暗くて優しくない女?私だって、仕事がうまくいってた時はもっと・・・」

「うん。」(わかってるよ、という顔で)

朱里「(晶の顔を見て)ムカつく!!(晶が持ってきたビール飲みながら)こんなビール一本で懐柔されないから。餌付けされたんじゃないから!」

「はい。」

朱里「・・・私も思った時ある。京ちゃんはあたしにあなたみたいになってほしいんだなって。でも違うから。どんどん逆のことした。」

「私たち、誰の人生を生きてきたんだろうね。」

京谷は、のんきに晶と楽しく過ごしていた4年間の中で、二人の女がこんなにも自分のために生きていたとは思わないだろう。実際、いくつもの顔を持って私たちは生きている。家族向けの顔・恋人向けの顔・友達向けの顔、仕事向けの顔・・・。でももちろんそれは「自分のため」にやっているはずだ。そしてどの相手に対しても「自分本来の部分」を残している。だからいくつもの顔を持っていても、さほど苦痛にはならない。しかし晶も朱里も自分がそうしたいからではなく、相手がそう望んでいるだろうと思って「相手のため」に自分を演じていたのだ。そのことが共通点だった二人。第5話では、お互いをコンプレックスに感じて嫌悪し合っていたのかと思っていたが、二人はやはり似ていて、表と裏のような関係だったのだ。

 

京谷との決別

朱里とビールを飲んだ翌日、千春から連絡で京谷の実家に来た晶。病状が悪化している京谷の父・克己の入院について、花井兄弟と対立している千春に加勢し、ずっと独りで夫を介護し、自宅で看取る覚悟を決めてきた千春を支えるよう兄弟を説得する。その後京谷と二人きりになり、相模湾を目の前にしながら、晶も“ある覚悟”を口にする。

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「私ね、京谷が好きだった。京谷と付き合って初めて、愛されるってこういう事なんだって思って、私の人生も捨てたもんじゃなかったって生まれて初めて思えた。京谷と別れるってことは、私にとって人生を捨てるのと同じだった。捨てたくなくて、しがみつくばっかりで、笑ってごまかして。本当の事何にも言えてなかった。でもそれってもう私の人生じゃないよね。私は私の人生を放り投げてた。投げたくない。だから、京谷とは終わりにする。」

京谷(泣きそうな顔で晶を見つめてじっと聞いている)

「はぁ・・ああ、やっと言えた。あ、そうだ。可愛くなくて何が悪いんじゃボケ、うっさいわ!(言った後照れくさそうに笑う)」

やっと言えた!晶にとって生まれて初めて愛される喜びを与えてくれた人との別れは悲しいはずなのに、なんて清々しいのだろう。晶はもともと逞しい女性だったはずなのだ。様々な人生の修羅場を乗り越えてきたのだから。愛され守られる幸せを知り、少し依存し始めてきた自分に気づき、その依存から脱する道を選んだだけなのだ。涙を見せずに凛として話す晶を見て、ただのドラマの世界なのに「これからも晶は大丈夫だな」と確信した。京谷が思うよりずっと強く自分で自分を幸せにできる女なのだから。そして、京谷は去ろうとする晶を呼び止め、朱里にマンションを譲ったことを言おうとするも、お土産を持ってきた千春に遮られ、話すのをやめてしまう。そもそも、そういう押しの弱さがすべての原因なんだよ、京谷。笑

 

5tapに戻り、今までで最高の笑顔のビールを飲む晶。そこに恒星が立ち寄り、疑惑の300万円について、今後どうするのか晶に追及されるところで終了。11月末に二人はそれぞれどのように動き出すのか。また、なぜ朱里は晶の会社に面接に来たのか。来たる28日(水)第8話が待ち遠しい。

 

余談だけど、ビッケブランカが歌う挿入歌「まっしろ」が収録された新アルバム「wizard」がとても良い。冬にぴったりなナンバーばかりで早く雪降ってほしくなる。


ビッケブランカ / 『まっしろ』(official music video)(日本テレビ系水曜ドラマ『獣になれない私たち』挿入歌)

wizard(CD+DVD)(初回生産限定盤)

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『大恋愛』ムロツヨシVS小池徹平の怪優対決が怖い

俳優って怖いわー。第5話では「このやろう、我らが戸田恵梨香をあんなに泣かせやがって」と尚をこっぴどく振った真司にイラつかされたのに、今回の尚の笑顔を見せられたら、あの真司はなんだったの?もう尚を離さないで!と先週の怒りは何処へやら、この二人の怒涛のジェットコースター展開に呆れつつもどっぷりハマっている私を再確認したのだった。その二人を脅かす小池徹平の怪演もすごかった。・・・と言うわけで、今回は第5話・第6話まとめた感想です。

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別れから結婚まで

観てるこっちのメンタルがやられるほどの展開の速さ

前回の第5話は真司(ムロツヨシ)が尚(戸田恵梨香)を支えていく自信がなくなり、急に尚の前から姿を消してしまう。9ヶ月後、尚は憔悴しきり、MCIの症状も少し進行し鬱症状も出ており、静かに死を意識し始めていた。そんな中立ち寄った本屋で真司が出版した本『脳みそとアップルパイ』を見つけ、真司が小説家として復帰し、再評価されたことを知る。真司の著書を知った侑市(松岡昌宏)のサポートもあり、真司と尚はいつもの居酒屋で再会し、結婚を約束する。そして尚の母からも祝福を受け、二人は無事に結婚する・・・。なんだこの怒涛の展開、こっちの心が追いつくのに大変だ。

侑市を誰か幸せにしてあげて

怒涛の急展開の連続で心がついていかずセリフも頭に入ってこなかった第5話。いや、ハッピーエンドで最終回のような終わり方だったし、尚も真司も可愛かったので良かったけど。だ・け・ど!ちょっと雑にも見えちゃったよ。結婚したから良かったんだけど、真司の振り方が徹底的すぎてトラウマレベル。急に「別れよう」からの、荷物送りつけるあたりが「ちょっと待てコラ。あまりにもひどいだろ、ストレスで症状悪化させてどーすんだよ?」と真司に殴り込みに行きたくなった笑。再会するにしても侑市母がもし本を買ってなかったら侑市が二人に連絡取ることはなかったし、侑市から真司に連絡なかったらこのまま尚が1人だって気づかずにいたんだよね?最初は尚を思うが故に身を引いてるとわかって観てたけど、尚と別れている間の真司の葛藤とか、真司と尚の再会までをもうちょっと丁寧に描いて欲しかったなあ。そしたら真司からのプロポーズのあっさりした感じに対する違和感拭えたわ。二人の演技が感動的だったのにそこだけが残念。とにかく侑市には足向けて寝られないほど、感謝奉らなきゃいけないレベル。二回も振られてるのに好きな女のために身も心も削ってる井原先生を早く幸せにしてあげて笑。

 

イチャイチャが可愛い過ぎて困る

アドリブなのか脚本なのかわからない絶妙な二人の演技

晴れて結婚した二人は新居での生活をスタートさせる。真司の先輩・後輩の前でも尚は幸せオーラを隠さない。ツンもなく、デレッデレだ。こんな戸田恵梨香見たことない笑。引っ越しそばを作って食べる時も、真司の仕事している姿を後ろから覗いている時も、病院に診察行くときも、待合で会計待ってるときも、原稿考えながらの振り向きキスの最中も、ずーっとニコニコしている。どうしよう、すっごい可愛いんですけどwwwでも、この幸せがずっと続くわけじゃないとすでにわかっているから、余計尚の笑顔が切なくなる。そして、何度も言うけどムロさんこんなにイケメンでした?ちょっとムロさんの感情の無いロボットみたいな喋り方が、逆に戸田恵梨香のヒートアップした役をクールダウンさせてて、より一層大人に見せてるのか。よくわからんけど、時折アドリブっぽい二人の間合いがいいんだよね。戸田ちゃんをあんなに笑顔にさせるムロめ・・・笑。てゆか、ムロさんの多面性が怖いよー。日テレやテレ東で観てたムロさんは別人か。ドッペルゲンガ―??笑

 

いきなりサスペンス!

間宮夫妻に忍び寄る猛禽系男子・松尾公平

真司の付添いもあって二人そろって尚の診察に訪れると、隣に座った松尾公平(小池徹平)に「どちらが井原先生の患者か」不躾な質問を受ける。尚と真司は戸惑って答えないでいると公平は謝り、そこでちょうど尚達が診察に呼ばれる。この、何か意味ありげな公平の登場が観ているこっちの心をザラッとさせる。公平は尚と同じMCI(軽度認知障害)を患い、侑市の診察に通っている患者だ。真司に支えられ、仕事も続けられている尚とは異なり、公平は自分がMCIとわかると妻には出て行かれ、職も失いかけているという不遇な立場に置かれている。そんな公平は獲物をやっと見つけたかのように、尚たち夫婦に忍び寄ってくる。ラブラブから一転急にサスペンスチックに!!

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小池徹平の怪演

まずこの公平のグイグイくる感じにとても恐怖を感じる。公平は自分と同世代で同じ病気の人に出会えたのが単に嬉しいだけなのか。私には、公平が自分と尚を比べて自分の不幸な感情と同じレベルまで引きずり下ろそうとしているように見えてならない。もしくは、純粋にやっと自分を理解してくれる人が現れたという気持ちで、尚が女神にでも見えるのか。尚に近づくキラースマイルの陰に隠された真意が見えずとにかく不気味だ。何より、演じる小池徹平がうまい!!小動物のように丸っこい潤んだ目とは裏腹に、心の底で真っ黒い感情を秘めている表情にゾクゾクさせられる。『ごくせん』とか『シバトラ』を演じてた頃はそんな印象なかったのに、歳を重ねてから影がある役とか深みを増している感じ。ムロツヨシを圧倒する怪演っぷりとこれからの展開に目が離せない。

 

第2章もハラハラ落ち着かない

尚と真司を取り巻く人たち

その他では、真司の担当編集・水野明美役で木南晴夏さん出てきて、「絶対、尚のことちゃんと理解してないよね」って感じがチラチラ見せるの、ほんと上手い。かいがいしく真司に接する姿に尚に対するライバル心が少し垣間見えて心をざわつかせる。尚と真司の間にヒビでも入れようってことなら、もう変な魔法かけるで!!っていうくらい公平に続いて心配な存在。そして、仏の心と器を見せつけてくれた侑市も、何やら尚の母と良い感じ。え?そこ笑?きっかけは??という感じで、尚と真司の周りもザワザワしていて、ところどころぶっ飛んでる展開が恋愛ドラマの大御所・大石静先生ならではと思わざるを得ない。とにかく第1話からずっと落ち着かないな!このドラマ。ここまできたら、このジェットコースターから降りることはもはやもうできない。