なりきれない女の雑記

なりきれない女の雑記

現実と虚構に溺れる毎日。

『獣になれない私たち』晶は晶の人生を生きることにした

晶が本来の逞しさを取り戻した気がする、けもなれ第7話。長く暗いトンネルからやっと外の世界が見え始めた回だった。10月10日の初回から今までで、初めて後味の良い水曜23時を迎えたんじゃないだろうか。晶が新しく生まれるのに立ち会った気分で、私自身とても清々しかった。※以下ネタバレ含みます。そしてすんごく長いです。ご注意ください。

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恒星のお金の出所とウソと本音

呉羽の店からの帰り、晶と恒星はいつもと違うバーに立ち寄る。恒星が晶の分も支払ってくれたお金の出所について晶は尋ねるが、恒星は粉飾に関わった見返りということを80年代の映画になぞらえて、嘘か本当かわからないまま濁す。晶が真面目に話そうとしない恒星をたしなめると、逆に京谷に本音で話せたのかと聞かれる。以前は京谷に本音を話し、生まれて初めて人に愛される幸せを感じていた晶。それなのに、いつのまにか京谷に対して本音を話せなくなっていたのだ。それを笑い話のように話す晶を恒星は真面目に聞いている。そういう二人こそ本音で話し合っているということにいつ気が付くんだろう。そんな風に少しそわそわしながら観ている私。

 

京谷にとっての幸せと責任

場面は変わって、京谷は上司の橋爪部長とお昼を食べていた。「バカかお前!!」という橋爪部長の怒号が店内に響く。京谷と晶、そして朱里との関係を聞いた橋爪が京谷を一喝したのだ。ナイス部長。本当にグッジョブ。もっと言ってやって笑。朱里を引き入れたのは自分だから面倒見るのは自分の責任、晶との関係をちゃんとするのも自分の責任・・・と「責任」ばかり口にする京谷に、橋爪部長は疑問を投げかける。

部長「お前のそれなんなの?責任責任って」

京谷「そういうもん・・・でしょ?」

部長「深海さんのこと好きなの?」

京谷「好きですよ。好きじゃなかったらこんな苦労しませんよ。」

部長「お前の幸せって何?人生の目標。」

京谷「子ども欲しいし、幸せな家庭・・・え?そういうもんでしょ?」

部長「お前が深海さん選んだのわかる気がするわ。」

そう、京谷は「幸せ=家や子どもを持ち、家庭を築く」というステレオタイプのもと「愛する=相手を幸せにするという責任を果たすこと」と考えているのだ。自分が両親に愛され何不自由なく暮らしてきた環境を普通と捉え、「幸せとはそういうもんでしょ」と世間も自分と同じように考えているはずと思っている。だからこそ、朱里に「愛せなくてごめん」と言い、理想的な女性である晶を選ぼうとしている。もちろん、京谷の考えが悪いわけではない。むしろきっとそういう人って多い。しかし、京谷がだめなのは、純真無垢なのか、鈍感というか、目の前の晶の表面的な部分しか見えていないところだ。晶が恒星と話している内容なんて微塵も想像できていないだろう。いつも自分にポジティブな面を見せてくれる晶が可愛くて好きなのだ。だから前回のように自分が理想としている晶と違う面が見えたときに「可愛くない」と言い放つことができる。器が広いけど浅い。まったくもっておめでたい。ほんと中の人が田中圭じゃなかったら今頃相模湾の藻屑になっていたところだ笑。

 

晶に必要なものは「女友達」

他者の目線と言葉は大事だ。晶には自分を客観視してくれる女友達がいたほうがいい。時に叱咤し、時に褒めてくれるような。呉羽や夢子がそんな存在になれば結構最強だと思うのだが・・・。

魔法の言葉

晶の心に光が差し始めたのは呉羽とのシーン。京谷と関係を持ったことを100ハグで許してと言う呉羽のノリにほだされ、1000ハグで許すことにした晶。そうか、ハグで許しちゃうのかと思ったけども、晶にとってはもう京谷への気持ちが離れてるんだろうなということがここでわかる。前回の呉羽の告白で、女として共感できる部分に同盟的な感情を持ったのだろうか。素直に隣に座ることを許し、一緒にお酒を飲んでいる。話の中で、本音で相手と向き合いながらも奔放に見える彼女をうらやむ晶に、呉羽は「私は晶好きだよ」と言う。晶が欠点だと思っている「周りの事を考えすぎるところ」を「特殊能力」「武器」と昇華してくれるのだ。ちょうど僕キセでも好きなところ100個あるというくだりがあった。自己肯定は自分だけではできない。他者の言葉に救われる。呉羽はそれがナチュラルにできる人なのだ。仲良さそうに5tapを後にした二人を見て、恒星同様、私も良いものを見たと思った。

夢子のバランス感覚 

そして、松任谷夢子と上野のやりとりでも、晶はハッとさせられる。打ち合わせの準備と言ってカメラのない会議室に逃げ込んだ夢子と上野は、先日の樫村地所との会合中に立ち聞きした晶と京谷のやりとりについて話している。

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夢子「彼氏にあんなこと言われたら、私だったら立ち直れないかも。<中略~会合の店前での晶と京谷のやりとり~>『かわいくない』だよ?『かわいくない』!深海さんに乗り移って代わりに言ってあげたい。『かわいくなくて何が悪いんじゃボケ!うっさいわ!』って。」

上野「でも僕もちょっと思っちゃいました。深海さん笑ってるほうがいいなって。」

夢子「なら、自分で笑わせなさいよ。散々深海さんに迷惑掛けといて何言ってんの。」

一言で夢子、最高。あんなに同僚として最悪に感じられた夢子の株が、ここまで爆アゲになるとは思わなかった笑。何より演じる伊藤沙莉ちゃんの絶妙な演技が素晴らしい。本当に夢子は良い子なんだよな。自分をよくわかっている。一度自分に絶望して、周りとの付き合い方を変えた賢い子なんだと思う。きっとこの職場じゃなかったら、多少抜けていても彼女の洞察力などの長所を見出して上手く伸ばしてくれる上司に引き上げられ、活躍できたかもしれない。そして、晶がもし夢子に心を開くチャンスがあるなら、最強の女友達になるかもしれない。

 

誰の人生を生きてるんだろうね

晶のため?に災難続きの恒星

一方で、朱里は相変わらず困った女だ。晶が立て替えた飲み代と勝手に持ち帰った千春からの晶への荷物を届けに、深夜に晶の家で待ち伏せする。そして、終電もお金もないからと、図々しく晶の家の玄関前で寝ようとするので困った晶はやむなく部屋に泊まらせる。(ウサギは大丈夫かとTwitterのTLに心配のツイートが並ぶ笑。)晶がいない5tapに堂々と顔も見せ、恒星と対峙する。

朱里「みんな深海晶が好きだよね。気が利いて愛されるキラキラ女子。」

恒星「そう思うよな。だけど、実際の深海晶はいつも無理して死にそうな、周りに都合よく使われるギリギリ女。」

朱里「は?」

恒星「君さ、自分が一番不幸だと思ってるでしょ。」

朱里(恒星をにらみつける)

恒星「不幸の背比べは楽しいですか?」

朱里(飲んでいた自分のビールを恒星にぶっかける)

恒星よ、いつもいつも晶のために災難に遭っているね。駆け付けた晶にその後「余計なこと言い過ぎ」と窘められるけど、私は言いたい。晶、恒星は何も悪くないの笑笑。恒星の良いところは、京谷に殴られたり朱里にビールぶっかけられてることを晶本人に言わないところ。言葉はナイフだけど本当は優しい。というより前より優しい気がする。表面的には社交的に見えて、本当は人と深く関わらないようにしていた恒星にとって、ここまで他人のために感情的になったり、口を出したりする行為はなかったんじゃないだろうか。恒星の中でも何かが変わり始めているのを感じた。

晶と朱里

朱里が、恒星に痛いところを突かれ晶の家(そもそも自分の家ではないが笑)に逃げ帰り、電気も付けずうずくまっているところに、晶がビールを持って帰ってくる。本音で話したいと言う晶に、朱里は「バカじゃない?」と跳ね返す。

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「私と朱里さんって似てると思う。」

朱里「どこが!?全っ然違う!」

「性格は全然違うけど、京谷と出会った順番が逆だったら、私が朱里さんだったかもしれない。朱里さんって帰れる実家ないんだよね?私も。それでもがんばって働いて、毎日笑顔で、みんなに頼られて、前向きに生きてる。」

朱里「イヤミ?」

「“そういう深海晶”が京谷は好きだったんだよ。目の前で苦しんでる朱里さんが、言ってしまえば重くてどうにもならないから。その代わり?だから私は朱里さんとは正反対の、明るくて物わかりの良い優しい女を続けてた。京谷の前でずっと。」

朱里「私は暗くて優しくない女?私だって、仕事がうまくいってた時はもっと・・・」

「うん。」(わかってるよ、という顔で)

朱里「(晶の顔を見て)ムカつく!!(晶が持ってきたビール飲みながら)こんなビール一本で懐柔されないから。餌付けされたんじゃないから!」

「はい。」

朱里「・・・私も思った時ある。京ちゃんはあたしにあなたみたいになってほしいんだなって。でも違うから。どんどん逆のことした。」

「私たち、誰の人生を生きてきたんだろうね。」

京谷は、のんきに晶と楽しく過ごしていた4年間の中で、二人の女がこんなにも自分のために生きていたとは思わないだろう。実際、いくつもの顔を持って私たちは生きている。家族向けの顔・恋人向けの顔・友達向けの顔、仕事向けの顔・・・。でももちろんそれは「自分のため」にやっているはずだ。そしてどの相手に対しても「自分本来の部分」を残している。だからいくつもの顔を持っていても、さほど苦痛にはならない。しかし晶も朱里も自分がそうしたいからではなく、相手がそう望んでいるだろうと思って「相手のため」に自分を演じていたのだ。そのことが共通点だった二人。第5話では、お互いをコンプレックスに感じて嫌悪し合っていたのかと思っていたが、二人はやはり似ていて、表と裏のような関係だったのだ。

 

京谷との決別

朱里とビールを飲んだ翌日、千春から連絡で京谷の実家に来た晶。病状が悪化している京谷の父・克己の入院について、花井兄弟と対立している千春に加勢し、ずっと独りで夫を介護し、自宅で看取る覚悟を決めてきた千春を支えるよう兄弟を説得する。その後京谷と二人きりになり、相模湾を目の前にしながら、晶も“ある覚悟”を口にする。

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「私ね、京谷が好きだった。京谷と付き合って初めて、愛されるってこういう事なんだって思って、私の人生も捨てたもんじゃなかったって生まれて初めて思えた。京谷と別れるってことは、私にとって人生を捨てるのと同じだった。捨てたくなくて、しがみつくばっかりで、笑ってごまかして。本当の事何にも言えてなかった。でもそれってもう私の人生じゃないよね。私は私の人生を放り投げてた。投げたくない。だから、京谷とは終わりにする。」

京谷(泣きそうな顔で晶を見つめてじっと聞いている)

「はぁ・・ああ、やっと言えた。あ、そうだ。可愛くなくて何が悪いんじゃボケ、うっさいわ!(言った後照れくさそうに笑う)」

やっと言えた!晶にとって生まれて初めて愛される喜びを与えてくれた人との別れは悲しいはずなのに、なんて清々しいのだろう。晶はもともと逞しい女性だったはずなのだ。様々な人生の修羅場を乗り越えてきたのだから。愛され守られる幸せを知り、少し依存し始めてきた自分に気づき、その依存から脱する道を選んだだけなのだ。涙を見せずに凛として話す晶を見て、ただのドラマの世界なのに「これからも晶は大丈夫だな」と確信した。京谷が思うよりずっと強く自分で自分を幸せにできる女なのだから。そして、京谷は去ろうとする晶を呼び止め、朱里にマンションを譲ったことを言おうとするも、お土産を持ってきた千春に遮られ、話すのをやめてしまう。そもそも、そういう押しの弱さがすべての原因なんだよ、京谷。笑

 

5tapに戻り、今までで最高の笑顔のビールを飲む晶。そこに恒星が立ち寄り、疑惑の300万円について、今後どうするのか晶に追及されるところで終了。11月末に二人はそれぞれどのように動き出すのか。また、なぜ朱里は晶の会社に面接に来たのか。来たる28日(水)第8話が待ち遠しい。

 

余談だけど、ビッケブランカが歌う挿入歌「まっしろ」が収録された新アルバム「wizard」がとても良い。冬にぴったりなナンバーばかりで早く雪降ってほしくなる。


ビッケブランカ / 『まっしろ』(official music video)(日本テレビ系水曜ドラマ『獣になれない私たち』挿入歌)

wizard(CD+DVD)(初回生産限定盤)

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