なりきれない女の雑記

なりきれない女の雑記

現実と虚構に溺れる毎日。

『獣になれない私たち』一寸先は長門朱里

先日の第5話はとにかくしんどかった。京谷(田中圭)の家に4年も暮らし続ける元カノ・朱里(黒木華)と向き合うため、1人でマンションに会いに行った晶(新垣結衣)。晶は冷静に「ここを出て行くつもり本当にありますか?」と問いかけるも、朱里ははぐらかす。生活のために居続けようとする話しぶりを聞いて晶は「京谷のこと好きだからじゃないの?」と聞く。すると朱里の怒りと途方もない虚しさが言葉となって晶に矢のごとく降り注ぐ。

朱里「京ちゃんはあなたと付き合うから、だから別れてくれって私に言ったの。どうして?なんで私の方だけ京ちゃんの事好きで居続けないといけないの?あぁ自分の彼氏はモテる人だって思いたいんだ?それでも私の方を選んでくれたーって。幸せだね。幸せでキラキラしている人は違うねー。ふーん、ウサギの餌まで買ってきて。自慢?お前とは違うんだって言いたいの?いつまでも無職で何にもしてない私とはそりゃ違うよねぇ。」

「私だってラクして楽しく働いているわけじゃ・・・」

朱里「はぁ?何贅沢言ってんの?仕事があって、仕事ができて、好きな人に好きって言ってもらえて、お義母さんにも気に入られて、なんでもあるじゃん。私なんて4年間ずっとここで、こんなスウェット着て、派遣会社行ってもお前に紹介する仕事無いって言われて、京ちゃんにも…。京ちゃんにもお前と晶は違うって言われて。話し相手はゲームとウサギだけ。私ウサギを飼ってもいけないの?なんにもないのに。あなたが持ってるいろんなもの私何にも持ってない!あなたみたいな人大っ嫌い。」

「・・・私はあなたが羨ましい。そんな風に泣けて。」

f:id:mana4panda:20181108131845j:plain

いやー、ここ最近で一番観ていてしんどかったかも。だって数年前の私ですやん、朱里ちゃんって。いや、今でも心の中に朱里はいる。だから全然嫌いになれない。むしろ抱きしめてあげたい。

私自身も職場でいじめにあったり、転職先がブラック企業で追い詰められたりが続いて心身ともにボロボロになり、かつ親のことで問題抱えてたりで本気で「生まれてこなければよかった」と自尊心が低くなっていた頃、友人とかが「仕事つらいわー」とか「彼氏とうまくいかないわー」って言うと、心の中で「いやそのくらいで辛い辛い言うなよ、私の方がもっと辛いわ。てゆか君、私より給料いいし。親も余裕あって楽しそうじゃん。」って思っていたし態度に出てたよ。ごめん、その頃の友人たち。でもね、誰しも朱里のような自分を抱えてると思うのだよ。私がしんどい頃、同じようにしんどかった友人たち。辛いという感じ方は人それぞれ違えど、朱里のように自尊心が低くなって、相手を攻撃して自分を可哀そうがることでしか誰にも自分を守ってもらえないような状態って誰でもなり得るんだよ。

この晶だって、朱里のようにはっきりは言えなくても、同じような状態。そして同じく朱里のような存在が大嫌いだと思う。お互いがコンプレックスの化身なんだ。この二人は相反するようで、実は鏡のような存在なんだよね。本心が欲している自分。でもお互いに表面しか見えていない。朱里はキラキラしている人がどれだけ努力をして今の地位にいるか、どれだけ我慢をして傷だらけになって立ち続けているかが見えていない。本当は朱里にも晶の傷が見えているけど、結果的に今の私より多く持ってて幸せそうだから敵。だから攻撃する。しかしその言葉はブーメランで、言えば言うほど朱里自身を傷つけてるんだけどね。本人は気づく余裕がない。晶は晶で、自分を守るために人に甘えて図々しく、感情的になれる朱里が羨ましい。そんな2人の話が通じ合うわけがないから堂々巡り。観ていてこっちもしんどいこと極まりなし。

仕事もプライベートも堂々巡りな晶。疲れ切って、とうとう心がショートし、脳がぶっ壊れ始める。民謡「幸せなら手を叩こう」を鼻歌で歌いながら、スタンプのように張り付いた笑顔を湛えて、前以上に淡々とハイスピードで仕事を片付けていく。その間ずっと「幸せなら手をたたこう♪」のメロディが流れ、サブリミナル効果のように「パンッパンッ」と手拍子する映像が挟まれ、より一層恐怖感をあおる。

f:id:mana4panda:20181108181703j:imagef:id:mana4panda:20181108181710p:imagef:id:mana4panda:20181108181746j:image

自分は幸せだ、幸せだ・・と思いこませようとする晶。沢山登録されている連絡先を眺めても、この辛さを吐き出せる人はいない。考えることをやめて、笑顔で何もなかったように静かに自分を殺していく。高層ビルの階段に登る晶が本当に切なくて苦しかった。今死んでもきっと周りは「あんなに笑顔で生き生きと仕事していた深海さんがどうして」ってほざくんだろう。誰も気づかない、理解しようとしない、それも一種の暴力だ。そう思った。

こんなに2人をここまで追い詰めたのは、紛れもなく京谷だ。もちろん、自分で自分の首を絞めている彼女たちの性格も問題があるのだけど、彼女たちを翻弄し苦しめているのは京谷の方向違いの優しさなのだ。朱里がオーバードーズした時も、晶が愛されてないと言った時も、自分のせいでこうなるのが嫌だという保身が一番最初に来る。他人に優しさを向けているようで、全て自分に向けた優しさなのだ。自分が可愛くて、結局流されるままに甘えられるところに逃げ込んでしまう。自分じゃ晶を幸せにできないから代わりに幸せにして欲しいみたいなことを恒星に言っちゃうし、最後で晶が恒星にキスしてるのを見てしまうと、踵を返してその場を去ってしまう。弱い、弱すぎる。千春さん、貴方の息子は優しいですが何も学んでいません。福井の小浜の海で、いつか千春さんを迎えに来た京谷の父の強さを、どうか京谷にも分け与えてください。

 

余談なんですけど、ラストの晶と恒星のキスを見た呉羽の目が睨んでるような怖い顔に見えたのは私だけ?次回予告に「呉羽と橘カイジとの結婚が実は偽装」とか聞こえた気がして、実は呉羽はバイセクシャルで晶を狙ってたらまためちゃくちゃだな・・・なんてくだらない妄想をしてしまった。とにかく晶の笑顔が見たい。見せて、野木さん!